きみの鳥はうたえる

昨晩は

夜通し起きていた

都市でいちばん高い鉄塔の

避雷針に腰かけ

夜明けの青を飛び交うよすがを見ていた

尾羽の影の形象で

どいつがどいつの仲間かわかるようになったよ


街を吊るす標識が燃やされる

空を吊るす電線に犯される

海岸線に引き裂かれる

存在しない水平線に張り裂けてしまう

存在しない帆船

存在しない喫水線に


夏の雨が雪に染まる

ガードレールに切断された遺体が小動物のように転がる

小動物が銃殺刑に処されるドキュメンタリーを観てから

そういう訴えが相次いでいる

千夜にわたり糸で区切られ組み敷かれ汲み尽くされ

眠れぬあまりのお伽噺が鏡の向こうをすり抜けていく


夢の中で悪い扉を開けた

虫のように尻を光らせるビルが鉄塔が広告塔が

車線変更で人体のように

バラバラにされて昏い夜明けを仰ぐ

扉の向こうで海はささやく

「日本語に都市は逼塞している

 くらげのようにやわらかな臓腑

 羽根の刃先で切り裂かなくては」

 滑車が

 顎骨の底で回る

 重工業的な効果音には

 偽装された小動物の運搬がふさわしい

 「回せ

  回せばいい」

  動かない動点

  期待をもたらさない待機

  「待つこと

   待ちながらあやめること

   自律的な伸長を絞殺によって留めること」

   向こう岸への綱渡り

   朝霧の底に見えなくなる


「きみの鳥はうたえる」

 きみはいう

「きみの鳥はうたえる」

 ぼくはまだ

  暁が明けきらぬまま

   膝を抱えて星を仰ぎ待ちくたびれて

    尾羽のニュアンスの夜ごとの焼尽

     都市をむさぼる光を感じながら

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