引き裂かれたカーテンの海

やわらかく沈む

端と端を

やさしく持ち上げ


鼻梁の中心へ寄り集めた指たちに

力を託した


波打つクリーム色の襞が引き裂かれたまま

たおやかに折り重なり

廃屋を埋めている

月明かりが窓から穂先を差し入れ

その表皮に波濤を描く


あの夜

カーテンは生きていた


砕けたガラスの宿すような

二度と同じ形をなさない

夏の沖合を岬から見はるかす


沖合に船はなく

網膜の裏まで渇いてようやく

食物に飢えていると気づく


割れたバス停の向こうから

猫を撃つ音が聴こえる

粘土のような姿で

動かない信号機の下

絶え間なく渇いたアスファルトの上

草いきれに囲まれて

かたくなに折り重なる


誰も知らない岬から身を投げる君のことを思うと

飢えを堪えてここを訪れた理由がわからなくなる


午後の光は砂塵に汚れて

裂け目のない完全な僕らは生きている

どこへ行く?

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