詩?

忠臣蔵

僕らが射ころした猪は

僕らが射ころした猪は

硬い雪原に腹を横たえ

遺失物のように横臥していた


外套の内側が汗ばんでいた

昂奮に頬が赤らんでいる

霧のような吐息をつきながら

口々に互いを囃し立てた朝


僕らはその頃

狩りを熱中していたのだ

命の収奪という行為性にではなく

その結果としてあらわになる世界の固着

無人称的な記録としての死を


たとえば

鯨を撃とうとしたあの船のこと

潮が白いあぶくとなって足下を濡らした

鉛色の不安定な揺籃の海で

唯一おぼろに定立していたデッキ

人工の足場が

致命的に

しかも絶えず傾ぐのを感じていた

なんともろい足場だ

地は振動そのもの

硬い足場は海原に隷属するものでしかない

見せかけの固着

僕らは陸離たる光栄から見放され

まったく孤立していた


過剰に巨きな躍動への迎撃の試行

幾度も装填を繰り返した

磯のにおいにみずからの怨恨を感じながら


そうしてその去りぎわ

不安定な僕らの弾が側頭に触れていた

こわばる皮の上をすべっていった

そのわずかな痕跡を波間に僕らは

彼はあの迎撃を知っていただろうか

やがて海底へ潜り

なにごともなかったかのように

僕らとの関係が途絶しても


銃創よ疼け

海はおまえのためにある


僕らが射ころした猪は

氷塊のような露岩の突き出た下草乏しき雪原へ

遺留品のように横臥していた

その腹

肉というよりむしろ

どろどろした血液の充溢を予示する大きな腹の

内部を蛆が食み

蝿が宙で円を描くにしても

僕らは突き立つ霜柱の寝台で

今も変わらずそこに彼が固着している光景を

夢想せざるをえない

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