第十三話 四人の旅人


早朝、依頼を受けてくれた4人と私は城壁の扉前に集合していた


「依頼人のシルキーさん代行で参りました、ミスティと言います」


よろしくお願いします。と頭を下げると

依頼を受けてくれた旅人さんたちは興味なさげに手を振る


「あーあーいいってそう言うの。別に今回限りだしな」

「そうね。連携が必要になってくるような依頼でもないんだし」

「ふんっ、このあたりなんて雑魚の山だろ? 俺一人で良いんじゃねぇのか?」


と、口々に言うのは剣士と戦士と魔法使いさん

協力し合う気は皆無らしい


「で? 編成は嬢ちゃんが決めるんだろ? ご主人様からのご指示はちゃんと貰ったか?」


そしてもう一人の赤い髪にバンダナ巻いた剣士さん。

この人はなんか……うん、好きになれない


「あくまで、仕事内容は倒壊した民家からの遺体の回収になります

 それを終えた後、日が暮れる前に森林地帯へと向かう予定になります

 移動は馬車を使っての移動になります。馭者は戦士さん。お願いします」


「あいよ」


「えーっと……出来ればお名前をお伺いしたいのですが」


私のその一言には体操不満そうな顔をしたみんな

一人じゃなくて、みんな嫌そう。そんなに仲悪いのかなぁ

何はともあれ、4人は名前を教えてくれた


戦士さんはエドマンド

長髪剣士さんはロロ(本名:クロロイ)

魔法使いさんはエイーシャ

赤髪剣士さんはレリック


「ありがとうございます。森林地帯に入る際の編成は後ほどお話いたします

 まずは、時間が惜しいので村へと移動しましょう」


依頼の内容が内容で、報酬も通常から大幅に超えた金額

そのせいか、4人はそれぞれクセが強いというか、

互いに協力しようという感じがしない


むしろ、なんか……嫌な感じがする

フレシアさんで鈍ったと思ってたけど、なんだか、嫌な感じだ


「門兵さん、早起きさせてすみません、よろしくお願いします」

「フレシアさんに頼まれちゃ仕方がねぇ。ま、無事に戻ってこれるよう祈っておいてやるよ」

「お願いします」


フレシアさんの頼みはどこまで響くのか

もしかしたら、お金で買収したのかもと考えたけど、すぐに振り払う

余計なことは考えても仕方がない。今は、お母さん達のことが先決だ


「それではエドモンドさん、お願いします」

「あいよ」


エドモンドさんが運転席、ほか皆が馬車に乗り込み

乗っていない人がいないことを確認してから出発の合図をだす。

鞭をうたれた馬の鳴き声が城下町に響き渡り、私達は勢いよく、場外へと飛び出していった。


(さて、森林地帯のことも考えておかないと)


エドモンドさんは戦士。

大体、2メートルくらいで分厚い鎧と盾に大剣

見える体も筋肉の太さで素手で殴ったら私が怪我をしそうな感じで。

攻撃力はありそうだけど、前衛として前に出て壁役が良いかな


ロロさんは剣士。

戦士よりも肉体的に劣るけれど、すらりとしていてしっかりした感じ

剣はレイピアと片手剣の中間くらいの長さと太さ

速度重視の鍛え方をしているように見えるけど、攻撃力も捨ててない平均型


レリックさんも剣士

ロロさんとは違って攻撃特化の体つきに見えるかな

平均的な鉄装備に片手剣と特に大きく出てる部分は感じられない


エイーシャさんは魔法使い

シルキーさんの事前情報では水と風の魔法に特化した能力を持っているとか

水と風の中級魔法が使用可能


(ということで……というか、これは前中後もう決まってるよね)


「ねぇ、貴女」

「はい? なんでしょう?」

「昨日の人はそれなりに危険な以来だと言っていたけれど、貴女は平気なの?」


エイーシャさんは不安そうに私江尾見つめて言うと、

すぐそばにいたレリックさんが馬鹿にしたような笑い声をこぼす

苛めっ子の、あの笑い方だ


「依頼人の派遣者が死んじまったから報酬はなし。なんて言われても困るんだが?」

「う……」

「金は達成報酬ってなってんだ。雑魚を寄越して死んだから話は無効って考えじゃねぇよなぁ?」

「そ、それに関しては、問題ないかと」


そういう考え方もありなんだ。知らなかった

でも、本来はシルキーさんが行く予定だったし

フレシアさんは全力で私を行かせたくないって態度だったから

そう言う考え方はしてなかったと思う

というより。


「これはあくまで、私が同行を申し出たことなので、例え私が死んでも支払われます」


融解金を持っているのは私だ

厳密に言えば、フレシアさんが用意してくれたこの馬車に積んである

よって、この馬車さえ無事なら、

私が無事なら私から、私が死んでもシルキーさんにたどり着けば支払われることになってる

もちろん、私は死ぬ気ないけれど。


「なら良いわ。報酬が貰えるかどうか知りたかっただけだから」

「回りくどく聞こうとしないで直球で聞けばいいのによ。オバサンは面倒だねぇ」

「溺死させるわよあんた」

「その前に首を落とすが?」


限りなく本気の殺意をぶつけ合う二人はにらみ合って身構える

この場で圧倒的に不利なのは魔法使いだけど

それでも負けを認めない魔法使いさんの精神力は相当なものだと思う――けど。


「止めてください。喧嘩させるために依頼したわけじゃないです」

「……ふんっ、分かってるわよ」

「ちっ、つまらねぇな」

「余計な事をするなら報酬は減額するようシルキーさんから言われてます

 今後は私の指示以外のことは控えてください。良いですか?」


ハッタリだけど。

でも多分、こうでも言わないとこの人達従わないよね


「はいはい、りょーかい」

「わかったわ」

「なるほど」


馬車を操縦してる戦士さん以外の人達は了承してくれたので

ひとまず安心……だと思う


それからしばらくは、誰も何も話さない時間が続いた

ただただ、がたがたと馬車が揺れる音

草原の短い草を踏みつぶしていく音

王国までの整備された道はあるけれど、

村はその道から大きく外れてしまっているせいだ

そして、悪路を進むこと1時間程度……私は1日ぶりに、村に戻ってくることが出来た


「こりゃひでぇな」


誰かが言うその言葉をかみしめて

焼け焦げた嫌な臭いを肺に感じて、首を振る


「みなさん、ご案内しますのでついてきて下さい」


感傷に浸ってる場合じゃない

帰ってきたんだ。みんなの為に、みんなを助けるために


だから早く。と

私はみんなを引き連れて、避難所が立っていたはずの場所へと向かった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る