第8話 来客!

 貴重品袋を手に戻ってきた高岡さんを見て、哲子は感嘆の声をあげました。


「すごいわ、紫さん!一体どうやって取り返したの?」


「ちょっと哲子さんの下剤を使ってね。今頃トイレでさぞ苦しんでいることでしょう」


「まぁ」


すると突然、誰かが慌ただしく扉を叩いてきました。


「どなたですか?」


扉を開けると、前屈みになって悶える皇潤の姿がありました。


「あ…すみません…。ちょっとトイレ貸してくれませんか!」


きっと色黒細マッチョに先にトイレに行かれてしまったのでしょう。


「あんたに貸すトイレなんかないわよ!」


哲子は彼の要求をピシャリとはねつけましたが、


「いいえ、哲子さん」


高岡さんは首を振り、


「彼にトイレを貸してあげましょう」


と言いました。


「ダメよ!なんでこんな奴にトイレを貸さなきゃなんないのよ」


哲子は部屋に入ってこようとする皇潤の行く手を塞ぎました。


「おい!どけよ、ババア!」


「なんですって!このスリ野郎!」


「落ち着いて、哲子さん」


高岡さんは哲子をなだめ、それから皇潤に向き直って言いました。


「トイレを貸してあげてもいいけど、タダじゃ貸さないわ」


「は?!ざけんなよ!金払えって言うのか!」


「違うわ。今この場で、哲子さんに謝罪して」


「何だと?俺が何したって言うんだよ」


「とぼけないでよ」と哲子は割って入ってきました。


「気のある振りして私に近付いて、財布と携帯盗んだじゃない!」


「あ~!うっせーな…。わかったよ、謝りゃいいんだろ。騙して悪かったよ」


「図が高い!ちゃんと土下座して!」


「は?!調子乗んなよ」


「生意気言うとトイレ貸さないわよ?」


「チッ…」


皇潤は土下座して再度謝罪の言葉を述べました。


高岡さんは密かにその様子を動画に撮っていました。


哲子の許可が出ると同時に皇潤はトイレに駆け込んでいきました。


「ねぇ、紫さん。その動画何に使うの?」


「仕返しされないための牽制策よ。この恥ずかしい動画を晒されたくなかったらもう二度と私達に近付くなって釘を刺しておかないと」







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