第7話 仕返し!

 高岡さんは三人前のコーヒーの乗った盆を両手に、再び隣りの部屋へ行き、扉をノックしました。


開いた扉の隙間から煩わしそうに顔を覗かせたのは色黒細マッチョでした。


「あっ、すみません…!私ったらお部屋を間違えてしまったみたい」


高岡さんはわざとらしく驚いてみせながら、


「お詫びにこちらのコーヒーもらってください」


と、半ば乱暴にコーヒーの盆を突き出しました。


「へぇ…」


色黒細マッチョはいやらしい顔つきで高岡さんの全身をじろじろと眺めまわしました。


「よかったら、中に入ってゆっくりしていきなよ」


「え~でも私、部屋に戻らないと…」


「いいじゃん、少しくらい。男二人で退屈してるんだよ」


色黒細マッチョは些か強引に高岡さんを部屋に招き入れました。


「それじゃ、お言葉に甘えて…」


高岡さんはにっこり笑って盆の上のコーヒーを色黒細マッチョと皇潤に手渡しました。


コーヒーはだいぶぬるくなっていたので、二人はそれを一気に飲み干しました。


「ねぇねぇ、名前何ていうの?年は?友達と来てるの?」


二人は高岡さんを質問攻めにしてきましたが、高岡さんは笑顔で黙秘しました。


「私、占い師の方以外には個人情報を教えない主義なの」


「なんだよ、勿体ぶりやがって。教えろよ。減るもんじゃなし」


「どうせ教えたってあなた達すぐに忘れるでしょ」


「馬鹿にすんなよ」


色黒細マッチョは空っぽになった紙カップをぐしゃりと握りつぶし、


「おい、皇潤。この生意気な女に思い知らせてやろうぜ」


と、立ち上がって高岡さんに詰め寄っていきました。


「ああ、俺もむらむらしてたところだったんだ」


皇潤も腰を上げ、いやらしい顔で高岡さんに近付いていきます。


しかし高岡さんは動揺することなく、余裕の表情で椅子に座っていました。


「思い知るのはあなた達の方よ」


彼女がそう言った直後、男達の体に異変が起こりました。


どういうわけか、突然腹の調子が悪くなったのです。


「うっ…」


二人は腹を押さえ、呻きながら床に膝をつきました。


その隙に高岡さんは彼らの荷物を漁り、哲子の貴重品袋を回収しました。


「それじゃあまたね~」


高岡さんは満面の笑みで去っていきました。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る