第3話 ヤケ酒!

 逆ナンにことごとく失敗した哲子は、大通公園のベンチに座ってヤケ酒をしながら友人の高岡紫たかおかゆかりに電話で愚痴をぶちまけていました。


高岡さんは現在ぴちぴちの大学三年生。まったく世代の違う二人がどういう経緯で知り合ったかについては、前作の方をご参照ください。


「どいつもこいつも本当にムカつくわ!きっと後で私の誘いを受けなかったことを後悔するに決まってるんだから!」


空になった焼酎の瓶を投げ捨て、哲子は大きなため息をつきました。


「外見はともかくとして、やっぱり私には女としての何かが足りないのね…」


『仕方がないわよ。加齢と共に女性ホルモンは減ってしまうもの』


「そういう意味じゃないわよ」


『ねぇ、哲子さん。気晴らしにどこか遊びに行きましょうよ』


「どこかって?」


『そうね…。定山渓へ行ってラフティングなんてどう?』


「らふてぃんぐ?何それ」


『川下りよ』


「川?」


『楽しいわよ。本番前の予行演習だと思って…』


「“本番”?私、川下りの大会に出る予定はないわよ」


『いえ、三途の川のことよ』


「ま!失礼ね!私はまだ足先すら棺桶に入ってないわよ!」


『わかったわ。川以外の場所にしましょう。海はどう?若い人も多いし、ナンパされるには絶好の場所よ』


「いいわね。でも私、車持ってないわよ」


『それじゃ、父の車を借りてくるわ』


「ご迷惑じゃないかしら…?」


『一台くらい大丈夫よ。全部で十台あるから』


「十台?あなたのお父様、タクシー業でも営んでるの?」


『まぁね。しかも普通のタクシーじゃなくて、リムジンタクシーよ』


「素敵!楽しみにしてるわ!」





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