第3話 見合い写真
数日後、高岡さんから見合い相手の写真とプロフィールが届きました。
「どんな素敵な方かしら」
哲子は期待に胸を踊らせながら、写真台紙をそっと開いてみました。
「え?」
哲子の眉間に深い皺が刻まれました。その状態で、しばらくフリーズしていました。
写真の中から哲子に微笑みかけているのは、眩しいほどつるつるにハゲあがった、しわくちゃのおじいちゃんでした。その名は
「私、もしかして疲れているのかしら?」
どうしても目の前の現実を受け入れたくなかった哲子は、いったん写真台紙を閉じ、両目をこすって深呼吸してからもう一度ゆっくり開いてみました。ところが哲子が何をやっても、写真の権三朗が若返ることはありませんでした。哲子はショックのあまり寝込んでしまいました。
翌日、少し元気を取り戻した哲子は、一言文句を言ってやろうと高岡さんに電話をかけました。
「紫さん。私、見合いの件お断りするわ」
開口一番にそう言いました。高岡さんは残念そうに嘆息しました。
『哲子さんにぴったりの方だと思ったのに』
「失礼しちゃう!」
哲子はぶちっと電話を切り、怒りに任せて携帯を床に放り投げました。ところが携帯が床に着地するやいなや、
あまりにもタイミングがよかったので、てっきり高岡さんからの折り返しの電話かと思いましたが、ディスプレイには“非通知”と表示されていました。
「もしもし?」
少々怪しいと思いながらも、一応電話に出てみました。
『もしもし、哲子さん?』
相手の声を聞き、哲子はハッとしました。隆治だったのです。
「フッた女に、今更何の用ですか?」
『あのさ…実は俺、幸江と沖縄で同棲することになったんだ』
「あっそう。だから何?」
哲子はいらいらしてきました。
「沖縄でもハワイでもジンバブエでも、勝手に行けばいいじゃない。なんでわざわざ私に報告するわけ?」
『いやぁ~…哲子さん俺にメロメロだったし、俺が北海道からいなくなったら寂しがるかなって思って、最後に別れの挨拶くらいしてあげようと思ってさ』
いい加減、哲子はキレました。
「寂しくなんか、ちっともないわよ!さっさと地獄へ落ちろ!くそったれ!」
汚い捨て台詞を吐いて、哲子は電話を切りました。そしてその後、ベッドに突っ伏して大号泣しました。悔しくて仕方ありませんでした。
「きっと私は一生結婚できないんだわ。こんな思いするくらいなら、もう二度と三次元の男なんて愛さないんだから!」
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