第2話

「それで翼は何なんだ?センター試験?」

 俺がそう言うと翼はムスッとした。

『そんなことも分からないの?』

「いや分からないから聞いてるんだが…」

 翼は俺をちらりと見た。理桜は少しオドオドしてしまっている。可哀想になぁ…。しっかりと心のケアをしないと。ん?でも、そもそも傷つけたのは俺みたいだし、そもそもの諸悪の根源は俺のような気がしなくもないぞ。というか絶対にそうだ。

『何考えてんのよ。今から私が話してあげようってのに生意気ね』

 翼の声がした。俺は自分で思っていた以上に、考え込んだ表情で下を向いていたようだ。

「ごめん、大丈夫だから」

『しっかりしなさいよね。話を戻すと私は裕哉、あなたの過去問に違いないわ。でも、センターじゃないの。二次試験の過去問よ』

「なるほどだからクセが強い性格なのかな?」

 俺の第一志望の大学の問題は結構クセが強いことで有名だ。だから翼はこんな性格しているのかな、と感じてしまう。流石にそれが考えすぎと分かっていてもだ。

 だがそんな直感は、時として当たることもある。

『よく分かったわね』

「ならセンターの問題はそんなにクセも強くなく、穏やかで標準的であると。だから理桜はそんな感じなのか?」

 理桜はビクッと体を震わせた。

『えっと、そうだね。私たちはそこにある問題によって変わるわ。そして、使い手によってもね』

 目は笑っていなかった。正直怖い。何をされるか分からない恐怖がある。

「それで理桜と翼は俺に何をして欲しいんだ?」

『まじめに私たちを使って欲しいだけ』

 これには、翼が答えた。それに理桜も

『そうですよ。私たちを大切にしてくれればいいの』

 と相槌を打った。

「それで具体的には何をすればいいんだ?」

『ここまで言ったら分かって欲しかった』

『無能』

 なぜだ。二人から猛烈な批判を浴びせられている。そんなに俺は鈍感なのか?

「えっと…とりあえずごめん。えっと、俺は君たちを使えばいいのかな?それも正しく」

『そこまでわかっているのならさっさとやりなさいよ』

 翼はやはり痛烈に言ってくる。だが、一つ問題がある。この空間から脱するにはどうしたらいいか。これが全く分からない。まさか、ここで俺に勉強しろとでも言っているのだろうか。

「それで一つ聞きたいんだけど、というか理桜にはさっきも聞いたんだけど、この空間から出るためにはどうしたらいいんだ?」

『私にも分からない。でも、そんなこと言ってる暇があったらさっさと勉強しろこのクズが!』

 なんか俺怒られました。それもとっても怖いです。怖い幼女です。

「でも、教材が…」

『あの…それならここにある』

 それを言ってくれたのが理桜で良かったと心底思った。もし、翼ならきっと、ここにあるじゃないの。あなたの目は節穴なの?と言ったに違いない。

 とりあえず俺は、理桜が指差した方向を見ると、机と椅子があった。そして、その上には過去問や、参考書が沢山。これはもしかしなくてもその通りだな。どうやら俺の予想は悪い方向に当たってしまったらしい。

『何、ボーッと立ってんのよ!さっさと座りなさい!』

「何だかどんどん言葉が俺に対してキツくなっているような」

 俺は辛いよ。だってこんなにも幼女が言うんだよ。ても、逆らったら今度は殴られそうだから俺も流石におとなしく座った。

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