第3話 初級魔法へ
魔法。
この世界には5種類の魔法階級が存在する。
下から初級魔法、下級魔法、中級魔法、上級魔法、極大魔法。
初級魔法。
魔法の基礎の基礎。
他の4つの階級の基盤ともなる。
基本魔法陣のみで発動できる。
その魔法陣も簡単なものなので、瞬時に放つことができる。
しかし、威力、魔法の種類が少ないため実践で使用せず、入門という形でしか使用されない。
下級魔法。
名の通り下の位の魔法になるが、初級魔法より威力、魔法の種類が増加する。
これも魔法陣のみで発動できるが、発動スピードは初級より劣る。
中級魔法。
これも説明するまでもないが、下級魔法より威力、魔法の種類が増加する。
しかしここから少し詠唱が必要となる。
それも慣れればそれも不要となる。
魔法陣の中身が複雑になるので脱落者が増加しだす階級でもある。
もちろん魔法陣の複雑化や詠唱が必要なことから、発動スピードは下級魔法より大幅に劣る。
上級魔法。
威力は極大魔法に劣るが、魔法の種類であれば最多と言える。
魔法を発動する上で詠唱が必要不可欠となる。
中級魔法であれば、詠唱が不要になるほどにまで至れるが、上級魔法の場合、短くできれば上出来である。
さらにこの上級魔法は魔法陣の複雑性が増すことながら、一般的に使用できるものは少ない。
発動スピードは当たり前だが、相当遅い。
そのため、戦闘の場合、パーティを組むことが必須となる。
極大魔法。
まず極大魔法に関しては使用できるものは、ごく稀である。
その理由は魔法陣の複雑さ、詠唱を完璧にしなければ発動できないこと、魔力の消費量が多いため、パーティ人数が多数必要、パーティの足を引っ張りやすさ、とデメリットが豊富なためである。
だが、威力に関しては最大の威力を誇る。
魔法の種類も魔力の消費量が多いことから、少ない。
初級魔法程度である。
発動スピードは言うまでもなくダントツで遅い。
それがパーティの人数の必要性、足の引っ張りやすさとつながる。
この5つの魔法階級通して言えるのだが、魔法陣を脳内に覚えなければ魔法は発動はしない。
さらに魔法陣を発動させ、魔法が出るまでに魔法陣を破壊された場合、魔法は不発となる。
これが一般的に魔法に関してに知識である。
次に注意事項になるが、担当が変わるのでここまでになる。
ここまで読んでくれてありがとう。
王都魔法学校魔法講師 クレーテル・アルベルト。
ここまでこれを読んできたが型っ苦しい言葉の羅列だらけで肩が凝ってきていた。
クロムにこれで魔法を覚えろと言われたが、初級魔法覚える前にこんな長いとは想像だにしていなかった。
両手でそれを閉じると、ベットから起き、外に出る。
家を出ると、心地いい風が体を打つ。
俺は元々本を読まないタイプの人間なのだ。
ゲームの説明書を読まないくらいに。
そんな俺がこんな文章をこれから長々読むことになるのであれば、少しでも自然を感じていたい、それで外出することを決断したのだ。
背伸びをしながら、周りを見渡してみるが、人っ子一人どころか気配すら感じることができない。
なんでもクロムが曰く、村の敷地にいるのだが、相当端の方にこの家は建っているそうだ。
まぁこちらの方が気兼ねなく外に出れていいのだが。
風によってなびいている草原に腰を着くと、再び本を開く。
本の文字自体は何故か俺でも読むことができた。
こちらに来た時に勝手に脳をいじくられたか、はたまたこちらも同じ言語なのか、その答えはわからない。
こちらの言語を覚えなくていいのは楽だが、異世界感が薄れてしまうのはなんだかな。
本をめくり、初級魔法が載っているページにたどり着く。
「へぇー」
意外にも初級魔法にも種類がある。
これより種類の多い上級魔法が載っている本を想像すると、何故か鳥肌が立つ。
だって、いつか上級魔法を覚えるときがくるかもしれないのだ。
そんな妄想を自然と浮かべていた。
「いやだなー」
そんな思いとは裏腹に内心楽しみであるのは内緒である。
まずアニメでも王道の火の魔法の項目に目を落とす。
火魔法。
基本的には3種類存在する。
1つ。魔法陣から火の玉を出す魔法。
2つ。魔法陣から火を放つ魔法。
3つ。魔法陣から火を出したまま維持する魔法。
この3つとも総称してフロガと呼ぶ。
「フロガ」
呟いてみる。
もちろん火は出ない。
だがつい声に出してしまう。
なんたって魔法だ。
自分が元いた世界で魔法が使えることが人生であるだろうか?
否、ない。
この世界に来たからこそ使えるのだ。
そうこれこそ、アニメや小説の世界などで描かれる異世界転生というやつなのだろうか!
そんな興奮の最中、あることを思い出す。
異世界転生って。
一度人生が終わって、始まるものじゃなかったっけ・・・。
「そうなると俺って死んだのか?」
そんな答えに行きつく。
「・・・いや気にしない!」
頭を左右に振ると、嫌な考えを吹き飛ばす。
気を取り直し、発動方法の項目に目を落とす。
発動方法。
魔法陣を暗記し、手の平の上にその魔法陣を思い浮かべる。
次に「「フロガ!」」と叫ぶ。(慣れるまで)
「簡単じゃね!」
心が躍るな。
とりあえず隣のページに載っている、魔法陣も見る。
「何これ?」
その魔法陣の見た目は確かにアニメなどで見るそれであるが、そこに書いてある文字が理解できなかった。
こういう時にクロムがいてくれれば助かるが、生憎俺に本を渡した後出掛けてしまった。
魔法文字なのだろうか?
俺はとりあえず片っ端に本の中を調べたがそれに関しての記述は見つからなかった。
「あぁー」
力が抜け、その場に寝転ぶ。
先程までの高揚感は完全に消え失せてしまった。
そのせいあってか、うとうとしてきた。
寝るのにこんなに適した環境はないだろう。
「あーやべー」
そんな声も徐々に小さくなっていく。
「こんな所に人がいるのは珍しいね」
半開きの目でその発言者を目に捕える。
胸が大きいーーーつまり女性だ!
「おーい」
手を振りながら、女性はこちらに近寄ってきた。
慌てて起きる。
「何で返事してくんないのさ」
「いやうとうとしていたもので」
その頃には目が冴えていてその女性の全体図が目に映る。
その女性の腰まで伸びた赤い髪はゴムか何かによって一本に留められており、目は琥珀色をしており、スタイル抜群、高身長。
170cmぐらいはあるだろうか。
一言で表すなら、モデルそのものであった。
特別そうな衣装も似合っている。
「口開けてボーっとしてるけど、どうしたの?」
「いや綺麗だと思って」
「いや何っ、私を口説いてるの」
口説き文句と思われたのか、腹を抱えて笑いだしていた。
「違いますよ!頭が回ってなくて!それでですね!」
慌てて弁解する。
「わかってるから大丈夫よ」
笑い泣きしたのか涙を拭いている。
そこまで笑うことだろうか。
この世界については知らないことが多すぎる。
「いやー確かに君と一緒で最初はそう言って好意を寄せてくるんだけどね。結局戦闘の後にみんな話しかけてこないんだよね」
確実に理由がそこにあるだろ。
「何かないんですか?戦闘になると感情が高ぶって周りに迷惑かけるとか」
「失礼ね。私は後方支援よ。たまに前線に出るけど、それも数回しかないのよ」
その場の状況を見ない限りその答えはわからんだろう。
「その状況について・・・」
「クミル!サボるな!」
突如俺の言葉を遮って現れたのはクロムだったが、全く気配を感じなかったぞ。
「げっ」
さっきまで笑っていた顔は苦虫を噛んだ顔に変貌する。
「お主!」
「よぉクロム」
名がない俺はクロムからお主と呼ばれることが確定したみたいである。
「クミル行くぞ」
クミルの手を引っ張り、戻っていく。
「せっかくいい天気なのに!」
まったくもってその通り。
というかクロムが来たのはチャンスなのでは。
「クロム!魔法陣に書いてある文字について関しての本ないのか!」
行かすまいと声を張り上げる。
「本棚にある!それを読んどいてくれや!」
それだけ告げるとクミルと共に森の中に消えて行った。
その後、眠気も覚めた俺は家に戻り、地下にある本棚の中から本を探しているのだが、
「全然っねーじゃん」
さらに埃を被りまくっているので尚更探すのが嫌になる。
くしゃみや咳を繰り返しながら、最後の本棚まで進んでしまう。
「全然見つからないじゃん・・・これは?」
一冊埃を被っていない本に目が留まる。
魔法陣の構造。
背表紙に書かれたその本に手を掛け、取り出す。
「んっ?」
本に挟まっていたのか、はたまたその本と隣の本の間にあったのかは不明だが、紙切れ一枚がふわりと宙を舞う。
「写真か?」
それを間違えても折り目を付けぬようとキャッチする。
見事成功すると、それは五人の人物が写っている写真であった。
一人は多分クロムと推測できるだろうが、それすら判断できぬくらいにそれは色褪せていた。
後の四人はーーーわからん。
後でクロムに尋ねようと思いそれを抜き取った本に挟むと、俺は再び魔法習得のために、家の前の草原に向かった。
「さてやるか!」
魔法習得まであと一歩。
そして後戻りできない事態までもあと一歩と迫っていた。
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