鋼鉄少女・人間兵器
岸辺四季
第01話 阿具少尉の配属
赤茶けた地平にもう動くものはなかった。
大気のない惑星上では星も鮮明に見えた。リッチマンは地面に転がったまま地平線の向こうを穏やかな目つきで見ていた。さっきまでの戦闘が嘘のような静けさだった。もう何も殺すべきものが見当たらない。
勝利だ。機械虫の残骸は地平を埋め尽くしている。人間の兵隊も同じくだ。だが俺は生きている。大勢死んだかもしれないが、少なくとも俺は生きている。リッチマンは立ち上がった。最低でもイチ対ゼロ。この上ない勝利。完膚無きまでの勝利。完全なる勝利だ。それ以上に望むことなどあろうはずもない。
歩き出すと体のあちこちが痛んだ。
リッチマンのヘルメットの内側に映し出される拡張視界に、兵装とその内側の人体の損害状況が表示されている。それは真っ赤に点滅していて、リッチマンが満身創痍で、安静にすべき状態にあることを表していた。リッチマンは血の混じった唾をヘルメットの表示に吐きかけた。俺だって出来れば寝っ転がってたいんだよ、クソが。
だが戦場の死神に、破壊の王に、我らの隊長に、伝えなくてはならなかった。
今日もやはり我々の勝ちだと。昨日までも、今日も、明日からも、常に変わらず我らは最強なのだと伝えなくてはならなかった。俺たちはまだ生きていて、明日からもまだ戦うのだ。
「隊長、こちらリッチマン。生きてるかい」
返事はなかった。だがリッチマンは隊長の生存を微塵も疑わなかった。
それに返事はなくとも、リッチマンは彼がどこに居るのかを理解していた。
平坦な地表に突如としてうずたかい丘が有った。それは黒光りする鋼鉄の甲殻を持った蟻たちの残骸で築かれていた。そしてその蟻たちの残骸は、ほかのどこに転がっているものより無残に破壊されていた。ここだ。リッチマンは確信を持って残骸に足をかけ丘を登り始めた。
こんなことをできる人類が、いや生物が、他にいるはずがない
やがて丘の頂上にたどり着くと、一人の人間がそこに座っていた。
「隊長。任務完了だ。敵は壊滅、俺たちはほぼ無傷だ。帰って呑もうぜ」
傷だらけのリッチマンが言った。
「お前はまったく、マジで元気そうだな。リッチマン」
隊長、阿具京一郎こそ、まったく無傷で、三○時間以上前に戦闘が始まった頃と変わらぬ様子だった。リッチマンはこの男が怪我をしているのを見たことがない。
「おうよ。これからこのままシグマ方面の激戦区に転戦したっていいぜ」
いつもの軽口だったが、阿具は首を左右に振った。
リッチマンが訝しんでいると、阿具は立ち上がった。
「お別れだリッチマン。俺は首都防衛軍に転属だそうだ」
「防衛軍って、あんたが?」
リッチマンは驚いていた。
この『前線』で戦っているのは、ほとんど自分の命も他人の命も等しく価値を見出していないような流れ者ばかりだ。実戦部隊は一〇〇パーセント志願してここに来たもので、はるか遠く平穏な首都の防衛軍の所属しているのとは、同じ兵士といってもまるでタイプが違う。首都防衛軍には一兵卒に至るまで高度な教育を受けたエリート以外居ない。たとえこちらの兵士が異動願いを出したところで、受理される見込みすらない。基地の食堂の掃除にだって採用されるか怪しいだろう。
それがこの、よりにもよって『前線』を代表する兵士が転属だというのか。
「なんだろうな。クーデターでもやんのかね」
「笑えないって──いや。やるなら手伝うよ、俺は」
それは楽しそうだ。リッチマンの言葉に、阿具は愉快そうに笑った。
「やるなら連絡するよ。じゃあなリッチマン。さよならだ」
阿具は軽やかに立ち上がると、片手を上げて虫の残骸の山を降りていった。
リッチマンはその後姿を見送ってから、虫たちの残骸の上に寝転がった。今度こそもう寝っ転がったまま立ち上がる気力もなかった。これからは俺たちの王の居ない明日が来るのだ。
* * *
五週間後。
『前線』より十数光年、連合国クサナギ、首都星宝来。
阿具京一郎は大きな会議室の中央に一脚だけ置かれた椅子に座っていた。向かい合わせの長机には、ずらりと階級章に星を沢山つけた老人達が並んでいる。背後のブライドから漏れ出た光で、老人達の表情は影になっていた。だが苦々しい顔をしているだろうということは見なくても分かる。バカどもの見本市だ。阿具はほとほとうんざりしていた。
前線から来た阿具を待っていたのは、莫大な数の手続きと、二週間に渡るテストの山だった。これはどうもつまらんことになった。阿具は愉快な戦闘の日々を遠く離れて、生気が失せるのを感じていた。阿具は無精髭の伸びたアゴを撫でてあくびをすると、腕を通さずつっかけた軍服のポケットからガムを取り出して口に放り込んだ。
「阿具少尉、ちゃんと座れ。こちらを誰だと思っている」
少佐の階級をつけた男が苦々しげな表情で言った。見るからに事務方らしい痩せた男で、神経質そうにずっとメガネのつるを弄っている。阿具は首だけを傾けて男を正面から見た。
「なんだ、ちゃんと座らせるために前線から俺を呼んだのか? じゃあ俺の副官を呼ぶべきだったな。あいつはちゃんと座れる。俺は座るのが苦手なんだ。戦うのは得意だけどな。なんなら、今から二時間以内にこの基地を制圧してみせようか」
軽口を叩くと、少佐は不快そうに眉間にシワを寄せた。
「退屈そうだな阿具少尉。たしかにここは前線に比べれば、穏やかだがね」
中央の男が低い声で言った。
男はこの中で唯一、体に実戦部隊出身の兵士らしい雰囲気をまとっていた。年齢からは男がかなり昔にそこを離れたことが伺えるが、分厚い胸板や丸太のような腕は、常に戦いのために鍛え上げられたことを感じさせる。階級章は中将を表していた。そこまで上り詰めても、この男は戦うための準備を怠っていない。
好きなタイプだ。自然と阿具は笑みを浮かべ、椅子に座り直した。
「私は伊崎。この基地の最高責任者だ。最高の兵士である君にある任務を命じたい」
「そりゃテストしたり、まっすぐ椅子に座るより楽しいと良いんだけどな」
阿具が言うと、伊崎は挑戦的な笑みを浮かべた。
「君に、とある特殊部隊を教育して欲しい」
伊崎はそう言って、阿具を見つめた。
阿具は答えずに目を細める。
「編成は五人、実験投入される生体機械兵、特機だ」
「生体機械兵」
「そうだ。我々の敵である機械虫どもから取り出した細胞と、人間の遺伝子を掛け合わせて作られた兵士達だ」
「随分」
言いかけて、阿具は辞めるとポケットから煙草を取り出した。
「随分、何だね少尉」
「随分と。胸クソの悪い話だな中将」
阿具はしっかりした声で言うと、煙草に火を付けた。
「人体実験。確かに私も気持ちの良い話だとは思わないさ。だが、生まれて来てしまった以上、誰かが面倒を見てやらねばならない」
「俺が言ってんのはさ、そんな下らない任務に俺が当てられたってコトだ」
「下らない、だと」
驚愕の表情で左側の男が呟いた。
「下らないねぇ。新兵の教育ならもっと適した人材が居るだろう」
阿具は不敵に言った。
「戦闘評価が既にSに到達している彼女らに、一体これ以上誰が教えられるというのかね」
「それで俺より強い生命体だってのか? くだらんなあ」
阿具は興味無さそうに言った。だが急に目を見開いて、初めて驚いた表情を浮かべた。
「彼女たち?」
阿具が聞いても伊崎は答えず、表情すら動かなかった。
「入りたまえ、1号機」
伊崎が言うと、後ろで扉の開く音がして、軽い足音が響いた。
兵隊としては軽すぎる足音はそのまま阿具の横を抜けた。そして阿具の前に出るとくるりと振り向いた。阿具は大きく開いて居た瞳をぐっと細めた。
1号機は銀色の髪をポニーテールに結んだ年端もいかない少女だった。
「コミュニケーション特化型、1号機であります!」
すごい勢いで敬礼をすると1号機は大きすぎる声で名乗った。
「辞令は後日届ける。1号機、少尉を案内するように」
「はい!」
1号機は少しはにかみながら力強く言った。
「参りましょう!隊長!」
1号機がぐっ、と阿具の腕を抱くように掴んだ。
阿具は再び目を剥き、言葉を失っていた。
「えへへ、隊長殿、ご案内致します」
頬を染め嬉しそうに1号機は言った。阿具はそのまま扉の方に引きずられて行く。
「て、テメェ! 伊崎中将! 何の冗談だ、俺はごめんだぞ!」
うろたえた様子で阿具は怒鳴った。伊崎は何故か楽しそうに微笑んだ。
「やらねば転属だ。調理は得意かね少尉。ちょうど補給部隊に空きがあるが」
冗談めかしてはいるが、伊崎の目は本気に見えた。阿具は黙り込む。
「上手くやりたまえ」
「言ってろ、機会が有れば殺す」
阿具は伊崎を睨んだまま、1号機に引きずられて部屋を出て行った。
だが最後まで伊崎の余裕の表情は変わりはしなかった。
阿具と1号機は会議室から出ると、中庭を突っ切る渡り廊下を歩いていた。
中庭には突撃兵らしきマッチョたちが二列縦隊で勇ましい掛け声をかけながらランニングをしていた。阿具はそれを見ると苛々とした表情で煙草のフィルターを噛んだ。
「えっと、少尉殿の好きな食べ物って何ですか」
1号機は阿具の方を向いて後ろ向きに歩いていた。その表情はにこやかで必死に阿具とうち解けようとする様が見て取れる。だが阿具はまだ押し黙ったままだった。
「じゃ、じゃあ、少尉殿は休日は何をしているんですか」
阿具はやはり答えなかった。
「少尉殿、無口なのでありますね」
少し落ち込んだように1号機は言った。しかしすぐに気を取り直して顔を上げる。
「趣味とかは、無いのでありますか?」
「趣味か、俺の趣味は伊崎のような不愉快な野郎をぶっ殺して埋めることさ」
阿具はやさぐれた表情で言った。ぴたっと1号機は足を止めた。
「良かったぁ! やっとはなしてくれました!」
1号機は満面の笑みを浮かべていた。
「おぃ、俺の趣味について言及は無しか」
「えっと。私はやったことないです、今度一緒にやってもいいでありますか?」
阿具は手近な柱に頭を叩きつけた。
どうやら黙らせようと思っても無駄らしい。そもそもこいつに罪はない。悪いのは兵士を女子供にした馬鹿の方だ。阿具は諦めた様に首を振った。
「冗談だ。俺の趣味は機械虫と戦うことだよ」
「じゃあ、お仕事と同じで有りますね!」
「趣味が実益を兼ねてんだよ、便利だろ?」
「でも、趣味は仕事にしない方がいいって、本に書いて有りましたよ」
阿具は廊下に置いてあった灰皿に煙草を放り込んだ。
「仕事にしないで機械虫どもと戦ってる奴が居たら変人だろうよ」
「そっかぁ、そうでありますね」
1号機は微笑んでこくこくと頷いた。
阿具は呆れたように首を振った。今まで付き合ってきた兵隊と1号機とは、あまりにもかけ離れた存在だった。だが仕事は仕事だ。なんとかやっていかなければならないだろう。
「テメェ、幾つなんだ?」
思いつくままに聞くと、予想外に1号機は嬉しそうな表情をした。
「歳でありますか? 一七であります」
「一七って、兵学校には行ってねぇのか」
「陸軍兵学校に通いながら、こちらにお世話になっているんです」
「そっか。そういえば他にも仲間がいるって言ってたな」
「はい。私を始めとして五人、特機が配備されています」
「配備?配属じゃなくてか」
「どっちでも良い、私自体どう扱っていいのか分からない、と伊崎中将は仰ってました」
「あのクソ野郎か」
「いい人ですよ。うちの学校の校長先生でも有りますし」
ふん、と阿具は呟くと肩をすくめた。
「まぁ、成るようにしかならねぇか」
それは投げやりな言葉だったが、1号機は前向きに捉えたらしく元気よく頷いた。
それから阿具は再び煙草を咥えて、また歩き出した。
「どうにもならねぇ」
阿具が溜め息を吐くと煙草の煙が吐き出された。
これから阿具の仕事部屋となる元倉庫は、まだ真新しく人の気配が付着していない部屋だった。阿具はまだビニールシートがかかったままの隊長席にこしかけ、ビニールのかかったままの机に脚を投げ出していた。
向かい側には1号機が直立不動で敬礼をしていた。だがもう阿具にはどれが1号機なのか怪しくなっていた。阿具の前には五人の少女が一列に並んでいて、その全てが1号機と同じポーズで敬礼をしていて、同じ顔で、同じ髪型をしていた。
番号でも書いておけば良かった。阿具は呆然としつつ思った。
「では、自己紹介させて頂きます」
中央に立っている少女が言った。どうやら1号機らしい。
「私が1号機。先ほど申し上げた通りコミュニケーション特化型であります。少尉殿と、隊の他のメンバーとの意思の疎通が図れるように配備されました」
1号機が言い終わると、左側の少女が進み出た。
「2号機。情報戦特化型。あらゆる通信回線や情報機器の制御、侵入、妨害を担当します。何か質問があれば1号機に聞いてください。面倒ですので」
2号機は少しも表情を崩さずに言った。阿具は目を細めた。
「おい1号機、2号機は公衆回線に侵入してピザを頼むことも可能か」
「あ、はい可能であります」
1号機が答えると、阿具は2号機に向き直った。
「じゃ、頼んでくれ。一番でかい奴。アンチョビ抜きで」
2号機はかすかに目を細めた。
「そういうコトに使用されるのは不本意です」
「俺もこんな部隊に配属されたのは不本意だよ」
冷淡な視線を向けてくる2号機を阿具は平然と見返した。
「あ、あはは、ピザなら私が頼んでおくであります!」
1号機が二人の間に割って入った。
「わ、わた、私は3号機であります!」
1号機の右隣の少女が、おどおどと言った。
「ちょっと待て」
阿具は指を立てた。全員が黙り込んだ。
一瞬後に、部屋中にアラームがけたたましく鳴り響いた。
「やっぱな。いつだって俺の勘は正しい」
平然と言うと、阿具はデスクに設置された端末のボタンを押した。
ディスプレイ部にオペレーターの仮想人格が表示された。
『甲種戦闘配備発令。繰り返す、甲種戦闘配備発令。地表面への敵到達まであと一三○○。到達時の治安維持部隊による市民の避難予想完遂率七六パーセント。当番部隊は順次出撃し、展開の後各個撃破に当たれ。これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない』
阿具は口元をにやりとゆがめた。
「行くぞテメェら」
「しかし、少尉殿」
立ち上がろうとした阿具を1号機が制した。
「んだ?怖いとかぐずぐず抜かしてっと蹴っ飛ばすぞ」
「我々は当番部隊ではありません。さらに、我らは正式な部隊として発足してすらいません。現在、少尉どのは辺境部隊所属ですし、私たちはまだ兵学校の卒業見込み生であります」
阿具は最後まで聞くと、不精髭の残った顎を撫でた。
1号機は一息で言ったせいか、顔を赤くして肩で息を吐いていた。
「さすが兵学校の生徒、教科書通りだ。ふざけてるんじゃねえよ!」
阿具の拳が真新しいデスクにめり込んだ。
「ひゃっ!」
「市民の避難は間に合ってねえ、つまり市街地には沢山の人が居るんだ。子供や女が取り残されてるかもしれない。救助が間に合わなかったらどうする」
「少尉殿…」
急に真面目になった阿具に、1号機は驚いたように言った。
「お偉方の戦略とか戦術とか。基地の守りがどうだの、そりゃあ確かに理に適ってるのかもしれねぇよ? でもよ、俺たちが真に守るべきは市民じゃねぇのか」
5人がそれぞれの面持ちで阿具の言葉を聞いていた。
1号機は、目を潤ませて泣きそうな顔をしていた。
「わ、私が間違っていたであります!行きましょう少尉殿」
「わかってくれたか!」
阿具は1号機の手を取った。1号機も阿具の手を握り返した。
だが、1号機の右隣の少女がおずおずと手を上げた。
「何だ?」
「あ、あの3号機であります。少尉殿のお言葉感動致しました」
「うむ」満足げに阿具は言った。
「ただ発言に他意があると、分析されたのですが……」
「彼女は情報分析特化型なのです。言葉の抑揚や声の調子でその発言の意図などを分析することが出来ます。それで、少尉殿、発言の他意っていうのは、いったい」
1号機は3号機を補足して、それから聞いた。
阿具は黙り込んでいた。部屋中の視線が、阿具に集まっている。
「敵をぶっ壊してぇ、市民とか知ったこっちゃねえや」
笑顔で言う阿具に、部屋の温度がぐんと下がって行くようだった。静まり返った部屋に、ずっとサイレンの音だけが鳴り響いていた。
* * *
『首都防衛軍暴走、市街地を破壊、被害総額四兆円に達する』
紙面のトップの阿具はカメラに向かって中指を突きたてていた。
伊崎は溜め息を吐くと、新聞をたたんで机の引出しに放り込んだ。それから眉間に皺を寄せるとごつごつした拳を机に叩きつけた。
「声が聞こえんぞ!」
背後の窓ガラスが揺れるほどの声で、伊崎は廊下に怒鳴りつけた。
「反省してます!」
特機全員がぴたりと息を揃えて怒鳴った。
司令室の扉に背を向けて、阿具を含め六人が一列に整列していた。皆一様に水の入ったバケツを両手に持ち浮かない顔をしている。
「阿具少尉! 声が聞こえんぞ!」
部屋の中から伊崎の怒号が飛んだ。
「胸くそ悪いんだよテメェは!」
阿具は扉の方を振り向いて怒鳴る。
「追加だ少尉! あと三時間そうしていろ!」
「上等だ表にでやがれクソ中将!」
「表に立つのは貴様だ! 死ぬまで立っていろ!」
「たっ、隊長殿、落ち着いてくださいっ!」
扉を蹴破ろうとする阿具を1号機が必死に抑えた。阿具は食いしばった歯の間からぎりぎりと音を立てて目を剥いている。
「誰が一番敵をぶっ壊したと思ってんだ、俺だろうが!」
「で、でも、命令違反は処罰対象です。なんでもないです! ごめんなさい!」
3号機はおずおずと言ったが、阿具と目が会うと怯えて縮み上がった。
「だからって何だこりゃ! バケツ持ちのどこが処罰だってんだ!」
「減棒でも軍法会議でも堪えないバカが居るからでしょう」
2号機は正面を向いたまま、ぼそりと呟いた。
「あぁ!? そりゃ俺のコト言ってんのか?」
「それ以外に聞こえました?」
阿具は2号機に詰め寄る。だが2号機も負けずににらみ返した。
「まあまあ、落ち着いて下さい。仲良くしなきゃダメですよ。ほら二人とも笑って、ね?」
1号機は空回りしがちな明るさで一所懸命に二人の間に割って入っている。
「うるせえ敵を寄越せ! もっと俺に暴れさせろォ!」
平和ボケした基地内には、阿具の怒号もむなしく響くのみだった。
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