ニ
はあ。
あの後、気持ちを落ち着けるため、トイレに走った。そして三十分くらいして、公園に戻るともう優たちに姿はなかった。
そのことに安心もしたが、同時に落胆した気持ち味わう。
でも仕事だと気合をいれると、カエル像の写真をデジカメに数枚収め、私は役場に戻った。
「今日は飲みにいくぞ」
その夜、係長の一声で飲み会になる。場所は昨日と同じナルト。
私は何だから自棄になって係の人たちが心配するくらい飲んだ。
もうどうでもよかった。
新しい世界、それはむなしいだけ。
忙しくても、あの世界、優の妻で、優斗の母だった世界に戻りたかった。
「白田、カラオケでも行くか?」
ぐでんぐでんに酔った私に、どこかで見たような男がそう聞いてきた。
誰だっけ?
ああ、商工係の前野さんだ。
そういや、この人も来てたんだ。
「あ、はい。行きます!」
自棄になってる私は元気よくそう答える。
「じゃ、行こう!」
そうして三次会はカラオケで始まる。
このころはすでに人数も5人までに減っていた。
げ、女って私だけ?
そう思いながら、係長に誘われデュエット曲を一緒に歌う。久々のカラオケだったけど、お酒がかなり入っていて、ハイテンションに歌い上げる。気分が最高だった。
ふわふわして、もうどうにでもなれっという気分だった。
「じゃ、またな」
夜十二時。
さすがに明日も仕事だと、お開きになった。
「じゃ、前野。白田を頼むな。送り狼にはなるなよ」
送り狼、そんな言葉あったなあ。
私はかなりお馬鹿になってる頭でそんなことを考える。
「白田。一緒にどこかで飲みなおさない?」
係長と木下さん達を見送った後、前野さんが私の腰に手を当てて囁いた。
「いいですね!どこ行きます?」
私はその手を腰からはずしながら答える。
まだ飲みたいという気持ちが先行し、他に何も考えらなかった。
飲まないと、優と優斗のことで気持ちが押しつぶされそうで怖かった。
「じゃ、俺がよく行ってる店で……!」
前野さんが私の肩を抱き、お店に案内しようと歩き出す。すると、不意に前に黒い影が立ちふさがる。
「並子。それはないんじゃない?」
それは佳緒留で、すこし怒っているような顔をしていた。
「深池、なんでお前がここに!」
前野さんは牙を剥く様に彼を睨みつける。
「……前野さん。彼女を離してもらえますか?」
しかし佳緒留は彼の威嚇に動じることなく、にっこりと笑う。
それはなぜか、前野さんを怯えさせ、肩を抱く手がすぐに下ろされた。
「じゃ、白田のことはよろしくな」
そうして彼はそう早口でまくし立てると、逃げるように立ち去る。
なんなの?
暗闇に消える背中を見ながら、私はどうしていいかわからず、ふわふわする気持ちでその場に立ち竦む。
「並子。僕に付き合って。まだ飲み足りないんだよね?」
半ば強引にそう言われ、私は佳緒留と一緒に飲み直すことになった。
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