第2話 神は、勉強しなくても許される

「八神!何してるんだ!?起きろ!」


神の眠りを覚まそうとする愚民どもが、僕の名を、不届きにも読んでいる。だが、僕は目覚めることをしない。神が目覚めるのは、世紀末と決まっている。


そう、世紀末。愚かな人間どもに、天誅を加えるために、僕は起きると決めているのだ。


「先生!」


僕の隣で、愚かな人間の女が、叫ぶ。


「天咲、早く八神を起こせ!今は、授業中だぞ!」


「先生!八神君は、神になったので、起こさないでください!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


教室の中に、目に見えないざわめきが、波紋のように広がる。みんな天咲と呼ばれた女の発した天使の啓示に、息をのんでいるのだ。


『ナイスアシストだ・・・天咲さん・・・さすが自称天使・・・君こそ立派な神の使いだ・・・これで・・・』


「ふざけるな!?早く八神をたたき起こせ!」


「先生でも、神を怒らせない方がいいですよ!」


「神でも何でもいい!漫画の読みすぎだ!そんなことを言ってると、いい大学に入れないぞ!?お前たちの人生はそれでもいいのか!?良い人生を送れないぞ!」


先生が、顔を真っ赤にして、天咲さんにかけよる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


真っすぐの瞳で、天咲さんが、先生の目を見つめる。


「なんだ?なんか文句でもあるのか?」


「先生・・・いい人生ってなんですか?」


「!?」


その天咲さんの言葉に、僕は、一瞬で目が覚めて、天崎さんの表情を覗いた。


「天咲さん!?」


「ああ・・・神が起きてしまった・・・もう人類の世界は終わりですね・・・ハルマゲドンがきちゃいます・・・」


「いや・・・あの・・・・」


「おまえら!?あとで職員室に来い!」


「天使は神の命令しか聞きません!」


「八神!お前から天咲になんか言え」


「・・・一緒にあとで職員室に行こうね・・・天咲さん・・・」


「あら・・・神が言うなら・・仕方がないですね・・・でも愚民の言うことを聞くなんて・・・」


「ふざけるな!!」


先生の怒号は、そのあと30分以上も教室で続いた。


僕は、天咲さんの顔をずっと見ていた。彼女の目は、真剣そのものだった。


つづく








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