楽園の檻
春風月葉
楽園の檻
そこは楽園であった。
高い壁に護られ、敵となる生物はいない。
労働も必要なく、汗を流す人間はいない。
のんびりと人々はお喋りをして一日を過ごす。
争いなどとは無縁でいつまでも平和が続くと約束されている。
人々は平和だった。
人々は自由だった。
そして人々は無知であった。
考えることなく、ただ目の前の幸せを与えられていた。
壁の外には大きな大きな少女がいた。
彼女は小さな小さな洋服や食品を薄い壁の向こう側に放り込み、壁の中に広がる小さな世界を眺めてにこにこと笑った。
少女の人形遊びによって作られた小さな楽園。
楽園の住民達は自由で平和で無知であった。
楽園を囲う壁は世界を閉じ込める檻であった。
楽園の檻 春風月葉 @HarukazeTsukiha
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