第5話 ラッキーデーだけど彼女は……
ある夜、まだ起きていたトモとアンは、星空を眺めながら会話していた。
「ブツ、今日シャックの手伝いしていたね」
「うん。たぶんブツ、もうシャックに謝ったのよ。この前お茶したときに謝るって言っていたもの」
「良かったね」
「そうね。良かった」
ブツとシャックの仲は、少しずつだが良好になっている。それを見た他四人は、心の底から喜んだのであった。
「ブツが自分に自信を持ってくれたら、すごく嬉しいな……」
「アン、それは君自身にも言えることだよ」
「え?」
驚いたアンは、星空から隣の彼へと顔の向きを変える。それに対しトモは、彼女の大きく開かれた目を見てクスッと笑った。
「アンが自分を好きではないことを、おれは知っているよ」
「……何で?」
「分かるよ。当番のとき、必ず一回は暗い顔を見るから」
「あ……」
まさか自分のそんな一面を見られていたとは。アンは恥ずかしそうに下を向いた。
そして少しの静かな時間が流れた後、再び彼女は口を開いた。
「……私、吉日の自分が嫌になるときがあるの。きちんと良い日にできるかなって……」
アンは、吉日であるが故のプレッシャーを感じていた。大安という日を信じる者たちを幸せに導くことができるのか。彼女は当番の日になると、毎度そのようなことを考えては心を苦しめていた。
「確かに信じるも信じないも、その人の自由だけど……その信じている人たちをがっかりさせてしまうのが怖くて……」
「うん、分かるよ。でもアンの仕事は、自分を頼りにしてくれたその人を見守ることだよ。夢や願いに近づくように努力するのは、その人の役目。頑張っているその人を支えるのが、アンなんだよ」
「トモちゃん……」
「大丈夫。アンはいつも、立派に自分の役目を果たしているよ」
「……ありがとう」
トモに感謝の気持ちを抱きながら、アンはまたきれいな星空を見上げた。
「今日は本当に星がきれい」
「うん、そうだね」
「あれ? 二人とも、何してるんだ?」
突然の声に、二人はハッとして後ろを向いた。そこには、ぶー子と手を繋ぐセンショーがいた。
「お兄ちゃん! 何で声かけるの!」
「何でって……」
「もう! そういうところだよ、お兄ちゃんは!」
ぶー子はスタスタと、ある場所へと向かっていった。トイレだ。夜中だと一人で行くのが怖いので、兄を起こして付き添ってもらったのだ。
「あはは! かわいいわね、ぶーちゃんは!」
「センショーも一緒に見る?」
「お、何だ何だ?」
ノリノリなセンショーの声は、なかなかの大きさ。これでは……。
「うっせーな、兄ちゃんはよぉ……」
「起きちゃったじゃん……」
残りの二人も目が覚めてしまった。そして、
「お兄ちゃん、本当にバカなんだから!」
無事にトイレを済ませた妹に、兄はまた怒られた。
「みんな揃ったね」
トモは笑いながら、手招きをした。
明日は休日。きれいな星空の下で、六人はしばらく楽しい時間を過ごしていた。
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