3
温かい布団の中で目を覚ました。モカはまだとなりですやすやと寝息を立てている。
なんとなく日光に当たりたくなったので縁側に出てみると、手紙が置いてあった。差出人はシュテファン、どうやら届いてすぐのようだ。誰が届けにきたのかはわからないが、こんな朝早くからご苦労なこって。
と思ったが空を見上げると既に太陽はほぼ真上、どうやら俺は寝過ごしたらしい。
寝過ごしたといっても、学校があるわけでもないし、仕事があるわけでもないし、それこそ毎日が休日のようなものだからいっこうに構わないのだけれど。
封筒の上のほうを破いて便箋を取り出すと、クソみたいに汚い文字で短く文章が書かれていた。
正直、はがきでいいと思うぞ。
『今酒場で面白いことをやっている。二人もすぐに来い。』
具体的という言葉なんて知らんといわんばかりの手紙、地球で言えばB5より少し小さい程度の便箋に二言がただただ書かれているだけである。
俺はとりあえず寝室に戻ると、モカを起こす作業に入る。
揺らしてみたり、ほっぺたをつねってみたり、くすぐってみたりしたが、いっこうに起きる様子はなく、どうしたものかと思っているうちに腹が減ってきた。
ぼけーっと外を眺めていたら漸くモカは起き出してきた。モカの顔を両側から挟んで起こし、思い切り引っ張ってウェバーへ直行。
扉を開けると、デリアと全然知らないおじさんがひたすらアルコール度数の高そうな酒を飲みまくっていた。これは、俗に言う吞み比べとかいう奴だろうか。
正直よくわからないのだが、なんで、こいつらは吞み比べをしているんだろうか。生産性が皆無な勝負だなぁ……。
ガタガタガタガタガタガタガタガタ――
地震。地震。地震。それはごく普通の地震で、日本にいたころは時々あったような、そんな地震。
「キャー!! 何!? 地面が揺れているわ!?」
だとか、
「まさか! 魔王軍の仕業ね!?」
なんて、まるで地震を知らないようで驚いた。ぶっちゃけこの程度の地震はよくあることであり、なんなら地震自体は毎日起こっているはずなのだが。ここは日本とは違うし、本当に地震の少ない土地であるのかもしれないが。
「お二方!! ここにおられましたか!!!」
ウェバーの扉が開かれ、見覚えのある兵士が入ってくる。
「魔王軍がとうとう動き出したんですよ!!!!」
いや、お前、ただの地震だと思うぞ……。
城へ連行され、いつの間にか出来上がっていたらしい日本刀を渡され、よしお前らさっさと魔王軍を退治してこいと抜かしやがった。
舐めるのもいい加減にしてほしいところだが、やっぱり偉いやからというのは苦労というものを知らない生き物らしく、どうしようもないのであきらめることにした。
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