2
木刀があるのに鉄の刀が無い世界とは一体全体どうなっているのだ。
確かに今までだって同じようなわけのわからない和と洋の混じり方は見てきた。が、流石にここまでくると国民全員がすっとぼけているだけなんじゃないかとも思えてくる。
本当は違和感を感じているけど、誰もそれを口にしないとか、そういうことなんじゃないか、と思えてくる。
刀の説明を終えた俺は何故か一人城から追い出された。モカとの待遇の違いがひどすぎるだろう。いくら俺がよそ者だからって、これだからお偉いさんは嫌いなのだ。人にものを頼む態度っていうものがなっちゃいない。
急に呼びたてておいて片方は敬称をつけて手厚くもてなして、もう片方はといえばこの通り用が済んだらすぐに出て行けといわれる始末である。
なんなんだよ、マジ。
こういうときこそ酒だ、酒。城の中でモカが何をしているのかなんて知ったことではない。この世界に来て酒というものの悦びを覚えた俺は今日も酒に溺れる――
ウェバーは今日もそこそこ客が入っていた。
「おっ、おかえり。モカちゃんは居ないのかい?」
なんだってんだクソ、たまには一人だっていいじゃないか。
「モカならお偉方に呼び止められて未だ城で手厚くもてなされてますよ。ヘッ。」
「なんだ、機嫌が悪いじゃないか。何かあったのか?」
何も無かったわけではないが、別に言うほどのことでもない。
「いや何もないよ。何もないからアルコール度数の強い日本酒を出してくれ。」
「ああ、何かあったんだなこりゃ。ちょっと待っててくれ。」
シュテファンは奥へひっこんでいった。酒に少し期待する。
自分が下戸なのか上戸なのかはわからないが、まあ、こういう気分のときにはヤケ酒と相場が決まっている。
いや、決まっているのかは知らないが、俺が読んでいた小説や、見ていたアニメなんかは大体こういうとき酒をガバガバ飲んでいた。
それを見習い俺も酒を大量に飲むとしようじゃないか、ハハ。
「ほら、持ってきたぞ。まあ、飲めよ。」
硝子製のコップに並々と注がれた透明の酒。そういえば、母親はかなり酒を飲んでいた記憶がある。たぶん世間一般的に見ても上戸だったのだろうが、時々不気味な笑い声を立てながら飲んでいたのが実に怖かった。なんだろう、人間とは思えないような笑い方だったような気がする。
コップを持って口元に近づけ、ゴクリと一口。
ああ、なんとなく心地がよくなってきたぞ。よし、もっと飲もう――
ああ、頭が痛いし体が重いし全然何も覚えてないが、目を開けると俺の顔を覗き込むモカの顔があった。周りを見渡せばどうやらウェバーのようで、もう閉店間際なのか客も殆どおらず、店内は静かだった。
奥から水の音が聞こえるのは、おそらくシュテファンが皿なんかを洗っている音なのだろう。
そして俺は、途中で吐いたりもしながら、モカにつれられ無事に家へと帰還するのである。
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