アヘリストはマメ柴スレイヤーの夢を見るか?
年末、私は京都に向かった。
一人だけの孤独の旅である。
だがそれは決して寂しいものじゃない。 残念ながらアヘ顔、そしてそれを愛するアヘリストは常に『ぼっち』に慣れている。
だが同時にアヘリストは常に求めている。
それは何か? アヘだ。
人が金を求めるように私、私達はそれを求める。
……いや、すまない今のは撤回する。
この世界でもっとも崇高で敬すべきものに対してあまりにも礼が欠けていた。
アヘとはそんな即物的ではない。 とてもクリエイティブであり、物欲では満足し得ない。 もちろん性欲だけとも違う。
ただ買える物が増えるだけの紙切れとは違うのだ。
人は過ちを繰り返す。 だが大事なのはそれを反省して二度と繰り返さないことだ。
だが同時に失敗を恐れて何もしないことは停滞ではなく最も愚かな後退である。
アヘリストは立ち止まってはならないのだ。
私は『アヘ』を求める。 大地に。 空に。 空気に。 そして全ての人々に。
だが私が『お、おち○ぽミル…クくだ…しゃい』と求めるフタナリ少女のように願おうとも世界は私にお○んぽミルク…じゃなくて『アヘ』をくれない。
ならばどうするか?
簡単だ。 世界が私にアヘをくれないのならば自らが探し続けて見つけることだ。
そしてそれはただ一面的に見続けていてはたどり着くことは無い。
多面的に視点を動かすことでみつけられるはずなのだ。
今回は従来の視点から移動して、被アヘリスト側の視点を求めての旅であった。
もっともそれは婚約者のいる強気な女騎士がアヘ顔ダプルピースで終える物語のようなストーリーで終わる。
これはアヘリストにとってはありふれた甘くもなく苦く、そして心を締め付けるようなオチとなった道半ばの話である。
その店の存在はすでに知っていた。
古都のアーケード、その中心部にそれはあり、その日、私は朝早くに起きてまるでゴブリン退治へと向かう女騎士のような心持ちでいた。
看板には黄土色の毛並みとゴーグルのようなワンポイントにそこだけ白い毛並みの犬がうつっていた。
マメ柴。 一般的な犬と違い、小型である。 まさに犬界のゴブリンのような存在であり、ペットとしても人気のある有名な犬種。
その店は十数頭のマメ柴に触れあえることのできるカフェである。
ようするに猫カフェの犬ヴァージョンだ。
すでに私の心は一人の女騎士となっていた。
設定としては子供の頃から才能を見込まれ、優秀な成績で騎士団に入る。 小うるさい周囲をその実力で黙らせながらもこの闘いを終えたら結婚すると約束した優しい婚約者が居る21歳の気高く凛とした女騎士。
毎日の過食と運動不足を欠かしたことの無いよく鍛えられた脂肪と男としては不釣合いな巨乳を揺らしながらも、数々の歴戦をこなしつづけてダルンダルンとなった服と新品のパンツを身につけた稀有な存在である。
そんな私にもちろん気負いは無い。
幼少の頃よりゴブリンのようなマメ柴と違い、ゴブリンオーガのような犬種とも渡り合い、そしてその全てに降伏の証としての腹を見させ続けていのだから。
いかに数が多いともマメ柴程度など残らず蹴散らして君臨してみせると自信を持っていた。
そして私はこの闘いを終えたら結婚だけではなく、故郷に残してきた弟妹達を迎えにいくという誓いも立てている。
私が負ける筈が無い。 ううん、マメ柴なんかに負けないもん。
ゆらりと私は気軽にその巣穴へと料金800円を払って巣穴へと飛び込んだ。
連中はすでに私の来訪に気づいているらしく、まず一匹がその畜生丸出しの姿で私の足元へと飛び掛ってきた。
「遅い!」
一声発して私はさっと身を避わす。 そしすぐにまた別の一匹が飛び掛ってくるがそれもヒラリと受け流した。
それでもマメ柴は果敢に攻めかかってくる。
だが私にとってはいつものことなので弄ぶように彼らを倒し続けていった。
だが一つ誤算があった。
数が多すぎるのだ。 いまだ開店直後で単独でやってきた私に巣穴全てのマメ柴どもが押し寄せてくる。
「ちっ、この程度で…」
一向にマメ柴達の数は減らない。 倒されたマメ柴達もすぐに起き上がって向かってくる。
一般家庭に飼われているような犬と違い、観光地として歴史にも名高い古都で育った獣たちは集団戦闘に慣れていたのだ。
徐々に私の脳内に焦りが染み出てくる。
そしてそれがいけなかった。
「しまっ…!」
一匹のマメ柴が私の足にじゃれ付いてきたことでバランスを崩してしまった。
倒れた私にマメ柴達が獣臭い身体で圧し掛かってくる。
「くっ…このっ…」
立ち上がろうとするが獣どもが臭い息と共にヨダレを垂らしながら私の全身を舐め上げる。
「やっ…、そ、そこは…だっ…め…」
あがなおうとすればあがなうほどにそれがマメ柴達を余計に興奮させるのかやつらのボルテージは高まっていくく。
黒い毛色のマメ柴が私の頬を舐めあげると、白色のマメ柴が口元を舐めてくる。
それだけじゃない。 顔といわず、腕といわず、指先までもを獣たちが味見をするように私を蹂躙していった。
その攻撃によってグッタリとした私をほくそえむように、次に奴らはダルンダルンになった服を掻い潜って直接私の胸を舐めてきた。
「いぅっ…や、やめ…て」
疲れきった身体がそれによって敏感に反応する。
羞恥で顔が赤くなるが、連中はそれを見たことでますます興が乗ったのか?
また別のマメ柴が服の中に顔を突っ込んでくるが、すでに私にそれに抗する力は無い。
ただどうにかしてそれを逃れようとするが、それすら宴の余興のように楽しんでいるようだった。
く、悔しい…。 絶対に…負けるもん…か。
だがそれは皮肉にも、肌の表面に血が集まったことで私の身体はますます感度を高めていく結果になった。
「ふぅぐっ! あっ、ああ…!」
嬌声を上げてしまい思わず口元を抑えよとするが、その腕にはすでに無数のマメ柴達が群がっていて動かすことが出来ない。
その間にもマメ柴達の攻めは続いていく。
耐えようとすればするほどに身体は正直に反応してしまい、今まで上げたことのない声をだしてしまう。
だがそれすらも出なくなってしまった。
開いた口に一匹のマメ柴が下品にも舌を入れてきたのだ。
獣臭と餌の臭いをした意外に柔らかい舌が私の舌に触れる。
「ふっ…ぐぅううう!」
とうとう言葉すら発せなくなった私の高い声が巣穴に響く。
それでも私は耐えようとしていた。 早く起き上がってこの屈辱を果たそうと。
だが瞬間、何かが頬を軽く叩くのだ。
「えっ、お、大き…い」
私の顔の上に乗ったマメ柴の身体には不釣合いに大きい『剣』が当たったことに気づく。
そして驚愕するその瞬間にさえ、無数のマメ柴達の剣が私の身体に当たっていることに気づいた。
こ、こんな大きいモノが私の上の口に入って中に出されてしまったら…。
同時に何とも言えない臭気が全身からしていることにも気づいた。
気の早い獣の一部が排泄物を出していたのだ。
獣独特のツンとくる黄色い液体が私という『獲物』の反応に対して嬉しくて出してしまっていのだ。
「ら、らめ…や、やめて…もうだ、出さないで…」
言葉など通じるはずも無いのにその言葉が私から発せられていた。
それでもマメ柴達の動きは止まらない。 むしろその臭いの元が横になった私の全身に降りかけられ続けていく。
「ら、らめなの…それ以上…らめなの…止め…れ、動かないで…それ本当に駄目なんだから…ら…らめ…」
それは敗北だった。 そしてそれは降伏でもあった。 幾匹もの犬共を倒してきた私が生まれて初めて自ら負けを認めたのだ。
今までの犬たちと同じように腹を見せている。
それでもマメ柴達は許してくれない。
私が声にもならない声で許しを乞おうとしているのに『お前のことなど知ったことか、へへへたっぷりと俺達の相手をしてもらうぜ』と言わんばかりに容赦なく攻め立ててくる。
とうとう私は考えることをやめた。 この後のことなどもう考えられない。 もはやそんなことはどうだっていいことになってしまっていたから。
たとえ彼らの玩具として、遊び相手として全身から臭気を放つ物体に成り果てたとしても…それを私は諦めて受け入れていた。
マメ柴達の遊びたいという単純な欲求に私は人としての尊厳を忘れていつのまにかそれを楽しんでいた。
もはやそうすることでしか来た意味を感じないという思いで。
きっとその顔には顔の筋肉をフニャリと歪ませて喜色に満ちたアヘ顔となっていただろう。
数時間後。
呆然と店を出た私を通行人たちがしかめっ面で見ている。
髪は奴らの唾でべとべとになり、服のあちらこちらには濡れた痕がついていた。
でもその痕からは強烈な排泄物の臭いは消えてはいない。
そんな哀れな姿をしたアヘリストは古都の街をフラフラと歩いていった。
よし、イメトレは済ませた。
十分にそんな状況を想像しながら入店した私に対してマメ柴の数は予想以上に少なかった。
せいぜい4、5匹程度だ。
期待外れだ。 これでは無数のゴブリン(マメ柴)に蹂躙される女騎士(メタボアラフォー)の気持ちを味わえないじゃないか。
がっかりした私に追い討ちをかけるように店員が『ワンちゃん達の安全の為に決して抱きかかえたり無理に触らないでください。近づいてきたら撫でてあげるくらいにしてくださいね。』と注意されたことで、私は私の夢が潰えたことを知った。
考えてみれば当たり前なのだ。
生き物である以上は健康面やストレスを与えるようなことをしてはいけない。
むしろその辺をちゃんと考えているということで、良心的だとさえ言える。
だが身勝手ではあるが、これは信じて送りだした幼馴染の彼女がアヘ顔ビデオレターを送ってきたくらいショックであった。
だが世の中というものはそんなものだ。 アヘリストにとっては。
店に入らなければ品物は見れない。 代金を払わねば何も買えない。
当然のことと無理矢理納得した孤独のアヘリストは古都の街をフラフラと歩くのだった。
それでも心折れずに次なるアヘを目指して。
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