アヘ!st! 7月号 緊急特集 「アヘ顔beefについて。

 現在のシーンはまさに群雄割拠だ。 また様々なスタイルを持った人間が次々とシーンに入ってくることがそれをさらに助長している。


 そのこと自体は悪いことではない。 総統もかつて言っていた『アヘリズムの百花繚乱』はアヘリズムを更なる深化進化させていくことだろう。


 とはいえ、それゆえに各々が信じるスタイルがぶつかり合うことも数多くあった。


 今回の『アヘ顔beef』はまさにそれを体現する出来事であり、現在のシーンを端的に現しているだろう。


 アヘ顔黎明期から存在していた薬物アヘリズム(以下薬物アヘ)はそのスタイル故に初期からのヘッズ達を牽引してきた


 その功績はもはや語る必要は無いだろう。 


 かたや『純愛アヘリズム』はある種、陰惨であった薬物アヘからのアンチテーゼとして誕生した経緯がある。


 両陣営の対立はいくつかのbeef(揉め事も含めて)によってお互いの立ち居地を明確にしてきたという歴史があるが、それらは言い方は悪いがある種の議論としての前提もあり、互いに奮起しあうことによってシーンは進歩してきたことも否定は出来ない。


 事実、両方のスタイルで作品を発表している人間もいる。(代表格としては中田祐造であろうか)


 その対立の歴史によって(各々の考えはともかくとして)互いに共存していけることになった。


 今ではお互いの立ち位置をどうのこうの言うことは過去のことと見られているふしがあるが、今回の『アヘ顔beef』によってもう一度それを問いただされる事態となった。




 本誌、および著者ははあくまで中立であることをここに明記する。 


 それを前提にして今回の騒動について業界に関わっているマスコミとしての考えをこれから記す。


 そもそもの発端は薬物アヘの陣営に属する若手の『ヤクスルマン』が突如カクヨムに投稿したことである。


 その内容とまだ若手でありながらアヘ顔界の老舗を牽引する詩想はやはり圧巻というべきか、その世界観を如実に表しながら挑発的な内容であった。


 それにいち早く反応したのが同じく若手である『アヘラブ』のメンバーである「AHEEDA(アヘーダー)』であった。


 重厚で重々しい「ヤクスルマン」のリリックに対して真正面から反応し、普段の好青年染みたような見た目とは反比例するように激しいもので正に真っ向勝負と言えるような内容であった。


 二人の発表したものへのクオリティー評価はともかく、シーンはまさに新たな局面を向かえ、また属する全てのアーティストたちがこの問題に対峙しなければならないだろう。


 本誌、また著者の見解としては今回の問題はシーンの変化の際に訪れるある種のカタルシスではないかと思っている。


 最初に群雄割拠と書いたが、実際は各々のスタイル同士での交流は昔と比べれば活発になった。


 それは共存とも言えるだろう。 それによって互いのスタイルの一部を踏襲したNEWスタイルの誕生を促している。(薬物、もしくは愛による寝取り、寝取られスタイルがその典型的だ)


 だがそれは一面、馴れ合いとも言える。


 事実、薬物アヘスタイルや純愛アヘスタイルの古参のアーティストからそういった声が上がっている。


 ヤクスルマンは熱い男であり、そういった馴れ合いを憎んでいる男である。 


 だから彼はどこのクルーにもならず、一本立ちでこの業界に爪痕を残している。


 かつて著者はインタビューをしたときに『自分のスタイルが古いって人もいるでしょうけど、フラフラスタイルを変えるのは性にあわないんですよね』という言葉からもそれは見て取れる。


 おそらくヤクスルマンの今回の作品は馴れ合いに堕ちつつあるシーンを懸念し、また彼自身の憤りをあらわした結果ではないかと愚考する。


 一方でAHEEDA(アヘーダー)のアンサーはその憤りを退化として捕えているようにも思える。


 昨年のインタビューに置いて彼は『人って良くも悪くも進歩するじゃないですか、いつまでも同じではいられないし、俺はずっとこれでいくっていうのは止まってるというよりもむしろ退がってるんじゃないかって思うんです。もちろん本当に進歩してるかどうかって後にならないとわからないとは思うんですけど、いつまでも今のままでいいとは俺は思えないんですよね』

 

 両者の言い分は真っ向から対立している。


 ただシーンは安定しつつある。 黎明期のような激しい対立も少ない。 


 その中で一人が出した物言いを、スタイルを隔てたもう一人が真っ向から反論したこの『難問』をシーンに関わる全員が考えるときがきたのではないか?


 そしてそうすることによってカタルシスが予定染みたマンネリを破壊し、新たなる価値観をシーンに生み出すことを本誌、著者は心から願っている。


 そして現状を堕落として捕えるのか? はたまたそれを進歩とみなすのか?


 その答えは読者に委ねるとしよう。


 願わくば、その答えの先に更なるアヘ顔シーンの発展に繋がることを祈りつつコラムを閉じさせてもらう。

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