第3話
その後しばらくベンチに座っていて、気が付くとすっかり日が暮れていたわい。
さて、どうしたもんかの?
まずあの母娘を探しに行こうかのう。
いや、もしかしたら嬢ちゃんが明日またここに遊びに来るかもの。
よし、それまで待つとするか。
儂がそう思った時
「あの。もう暗いですけど、どうかしましたか?」
ん?
声をかけてきたのは何か冴えない感じの青年じゃった。
「いや、人を探しに行こうと思うての」
「そうですか。あの、その方はこの辺りに住んでいるので?」
「それはわからんのじゃ。だが夕方によく似た子供を見かけたのじゃ。それでその子が明日またここへ来るじゃろうから、待っていようかと思うてのう」
「いやいや、こんな所に一晩中いたら危ないですよ。今日はもう帰られたらどうです?」
青年がそう言うてきたがのう
「帰ろうにものう、どうやってここに来たのか全然わからんしのう」
「え? あの、大丈夫ですか? お家の電話番号わかります?」
「デンワバンゴウ? なんじゃそれは?」
「……あの、おじいさんは何処に住んでいるのですか?」
「ん? ◯◯山じゃが」
「え?(それって△△県にある山だろ? ここからだと相当な距離だぞ。あ、このおじいさんもしかして少し頭が……かも? でもこれだけハッキリと受け答え出来る場合は警察でも保護するのは難しいって聞いた事あるし)」
ん?
何か考え込んでいるようじゃの?
まあ、とにかくここにおったらいかんのじゃな。
「ありがとうな青年。儂は他所へ行くわ。ここへは朝になったら戻って来るわい」
儂が立ち上がって去ろうとすると、青年がまた声をかけてきた。
「あ、ちょっと待ってください。あの、もしよければ家に泊まっていきますか?」
「ん? いいのかの?」
「え、ええ(ほっといて事故にでもあったらヤバイし、とりあえず家にいてもらおう。警察には後で連絡するか)」
「それじゃお言葉に甘えようかの。世の中まだまだ捨てたもんじゃないわい」
儂は立ち上がって青年の後に着いて行った。
しかし「歩く」というのはなかなかいいもんじゃな。
景色が動くなんて新鮮じゃわい。
ふむ、普段も歩けたらもっと遠くにいるのとも話せるのにのう。
しばらく歩いて着いたところは
ふむ、これも何故か知らんがわかるのう。
二階建ての古いアパートだったわ。
「二階へ上がってすぐ手前が僕の部屋です。狭いですが寝るくらいはなんとか」
青年が申し訳なさそうに言うてきおった。
「いやいや、お構いなくの」
「あれ、おじいちゃん?」
「え?」
見るとあの嬢ちゃんが青年の部屋の前におった。
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