第2話

 あれ?

 ここは何処じゃ?


 いつもの風景ではない。

 おお、あれは。

 見た事無いはずじゃが、何故かわかる。


 滑り台、ブランコ、砂場……


 どうやらここは児童公園のようじゃな。


 儂はいったい、え?


「手」がある?

「足」がある?

「顔」に「髭」がある?

 と、いうか

 儂の「体」が……「人間」になっとる!?


「こ、これはどうした事じゃ!?」

 そう儂が驚き戸惑った時じゃった。


「ねえおじいちゃん、何処か痛いの?」

 ん? 誰じゃ?


 声のした方を見ると、あの小僧がそこにおった。


 え? ま、まさか?


 いや、あれから何年も過ぎているのじゃ。

 いつまでも子供のままのはずがない。

 この子は別人じゃろう。 


 だがのう、この子はほんにあの小僧とよう似ておるわ。

 他人とは思えんのう。

 いや待てよ、もしや?


「ねえおじいちゃん、大丈夫?」

 と、その子が心配そうに儂を見ておる。

 いかんいかん。


「あ、いや。大丈夫じゃよ。ありがとうな」

 儂は礼を言いながらその子の頭を撫でた。


「よかった~。病気じゃなかったんだね~」

 その子は笑顔で言うてくれた。


 ふむ、優しい子じゃのう。

 やはりこの子はあの小僧の息子なのかもの。

 

 よし、確かめてみるか。


「なあ坊や、お父さんはどうしているのかね?」

 じゃが坊やはそう聞いた途端に暗い顔になり

「うちにはパパがいないの。ママだけなの」

 俯きながら小声で言うた。


「そ、そうじゃったのか。すまんの」

「ううん。いいの」

  

 そうじゃったのか。

 あの小僧も既に。

 いや、それはないな。

 となると、ふむ。


「ではお母さんはどうしてるんじゃ?」

 子供がいるという事は母親がおるはずじゃ。


「お仕事。でももうすぐ帰って……あ、帰ってきた!」

「ん? おお、あの人か?」


 おお、長い髪で綺麗な顔立ちの女性じゃのう。

 それにあの小僧によう似た優しそうな目をしておるな。


 うんうん。良い嫁さんを貰ったようじゃな。


「あの、うちの子が何か?」

 母親が側に来て、心配そうに聞いてくる。

「ああいや。この子が儂の具合が悪いのかと心配してくれましてのう。そして少しお話させてもらっていたのですじゃ。ありがとうな、坊や」

 そう言うと少し怒ったかのような顔をしおった。はて?


「ねえおじいちゃん、私女の子なの」


 え?


「そ、そりゃすまんかった!」

 よう似ておるが娘さんじゃったのか。

 見た目は小僧そのままじゃし、わからんかったわ。


「ふふ。この子はこんな感じですのでよく間違われるんですよ」

「え~? ママだって子供の頃はそうだったんでしょ?」

 坊や、いや嬢ちゃんが笑いながら言う。

「もう、そんな事言わないの。さ、そろそろ」

「うん。おじいちゃん、ばいばい」

 そう言って母娘は去っていった。


 あ、母親とも話をしたかったのに……しもうたわ。

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