第3話
まずは、アリアとティアがここにいることを、妹に納得してもらわないといけない。
何時テレビの中に帰る事ができるか分からないからだ。
そろそろ妹が帰ってくる頃だ。
「おい、もうすぐ凛が帰ってくる。なんとか凛を納得させろ。お前たちがここにいることを。俺は2階で様子を見ている」
「ティア、あんたもいいわね」
「めんどくさいけど、がんばってみる」
う~ん。
アニメの中のティアは、こんな時はもっと積極的だったんだが、自分たちはただ、アニメのキャラを演じていただけというのは本当みたいだな。
演じていたのは、声優さんだと思うが、どういうことなんだろうか。
声優さんが声を吹き込んだおかげで、こいつらに魂が宿ったとか。
すると、ティアのこの態度や反応は、声優さんの性格が反映しているかもしれんな。
「ただいま~」
おっ、凛が帰って来たな。
凛はまず、キッチンに向かい、牛乳を一杯飲み干す。
そして、2杯目をコップに注ぐと、リビングの方に目をやる。
そこには、凛の見知らぬ外国人の女性が二人いた。
一人の女性の髪は白く目は赤かった。
もう一人の女性は髪は普通に黒だが、目の色は青と赤で左右違っていた。
そして、二人とも肌が透き通るように白かった。
凛は、肝が据わっていた。
こんなことでは動じなかった。
「は、はろー。ないすみーちゅう」
でも、英語は苦手だった。
「ハロー。私たち日本語分かりますので、だいじょうぶですよ」
「おーけー、にほんご、だいじょぶ、よかた」
肝が据わり、動じてない様子だったが、あれはただ緊張していただけだったらしい。
「あなたはどちらさまですか?」
凛はまだ緊張しているようだな。
どことなく片言だ。
「はい。私はアリア・スカール、アリアとお呼びください。そしてこちらが侍女のティアです」
ティアの眉間に皺が寄る。
額に怒りんぼマークが付きそうなほどに。
「誰が侍女だ、誰が」
「すみません。この子ったら、なかなかしつけが行き届かなくて。こんな乱暴な言葉遣いを見られてしまい、お恥ずかしい限りです」
「それで、貴方たちはどうして私の家にいるんですか」
「はい、私たちはあなたのお父さんを頼って日本に来たのですが、もうなくなっている事を聞いて、どうしたらいいか迷っていたのですが、貴方のお兄さんがとりあえず家の中に入ってこれからどうするか考えろって言ってくれたのです」
「兄さんがそんなことを。わかりました。わたしは堂本 凛。凛って呼んでください」
「分かったわ凛」
へ~え。兄さんも、いいことあるじゃない。
女の人にやさしくするなんて。
そう、自分は普通の中の普通と幸司は言うが、二次元しか愛せない男なのだ。
例外は、妹の凛だけかもしれない。
幸司は、妹の凛だけはとても大事にしている。
妹という響きが好きなだけかもしれないが。
二人が自己紹介している横で、ティアは両手を上げて、飛び跳ねて怒っていた。
「こら~っ、無視すんな~!!」
よくアニメで見る風景だった。
おお~、ティアがアニメを見ているように飛び跳ねている。
「それでは私は、兄さんの様子を見てきます。風邪をひいていたので」
その時ドアが開いた。
「お帰り凛。紹介するよ。この人たちは」
「もう聞いたからいいよ」
「そっか」
うん、
流石に凛は素直だな。
あの話を信じているようだ。
「おにいちゃん。それで風邪の方はどうなの」
「ああ、凛のおかげで治ったみたいだ」
「そうなんだ~」
「凛のおじやのおかげだ」
「えへへ」
アリアが幸司に囁いてくる。
「うそつき。おじやなんて食べてないくせに」
「嘘なんかついてない。少しだけ残っていたのを、つまんで食べたからな」
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