第4話

こいつらがTVから出てきて3日が過ぎた。

部屋の中の時間を止める実験を何度か試した。


「いいな。いくぞ。よ~いスタート」

「「えいっ!」」

し~ん


やはりだめだった。

どうやったらこいつら帰ってくれるんだか。


「何がダメなんだろうな」

「う~ん、わからないわね」

「もういいよ、帰れなくても。凛の作る食事はとってもおいしいし」

「ティア!もっとまじめにやりなさい」

「へ~い」


うん、やはりちがう。

アニメの中じゃ、ちょっと頼りじゃいところもあるアリアを、ティアが引っ張っていたのに。

これじゃ反対どころか、やる気のないティアをアリアが引っ張っている。

現実はこんなものと言う事か。

いや、現実とは言えないか。


「今度はどうする幸司」

「う~ん、明日は魔王の娘がはじまる時間帯にやってみるか」

「それがいいかもね。それまでいろいろ試しながら」

「そうだな」

「え~、まだやんの。もういいよ」


こいつは~

どうにかコイツにやる気を出させる方法はないものか。

翌朝俺は、ティアにやる気を出させる方法を提案した。


「ティア、話があるんだが」

「なに」


ティアは朝から、俺のコレクションのアニメを見ている。

ポテチをボリボリ食べながら。


「俺はな、お前にもっとやる気を見せてほしい」

「え、やる気、あるあるやる気」


嘘つけこのチビ。


「俺はお前に一つ提案する。お前達が帰ることに成功すれば、最高級のステーキを食べさせてやる」

「ほんとに?」

「本当だとも。男に二言はない」

「わかった!」


そうティアは言うと、2階に駆け上がった。


「なんだあいつ?」

「ステーキにつられて、時間を止めに行ったんじゃない」

「おお~びっくりした~いたのかアリア」

「ええ、まあね。それにしても、幸司は詐欺師の才能があるわね」

「詐欺師とは失敬な」

「それにしても、あの子はやっぱり馬鹿ね」


アリアの言う通り、詐欺師とまではいかないが、俺はティアをだました。

それにティアたちは、帰ってしまえばステーキなど食べられない。

そんな会話をアリアとしていると、


「えいっ!とりゃっ!うりゃっ!」


2階からティアの掛け声が聞こえてきた。


「食べ物につられるなんて、こっちが情けなくなるわね」

「そう言うな。どんな理由でも、やる気が無いよりはましだろ」


今日は日曜日で、凛は友達とショッピングに出かけていた。

俺とアリアは、ティアが見ていたアニメを見ていた。

そして、ふと思った。

このキャラたちも、もしかしたら魂が宿り、出てきたりするんだろうかと。

可愛い女の子ならまだいい。

むさい男だったら、最悪だ。

むさくなくても男は最悪だ。

しかし、超最悪なのは、暴れまわる魔物やエイリアンが出てきてしまったらこの世の終わりだ。

俺は恐々アリアに聞いてみた。


「聞きたいことがあるんだが」

「今いいとこなのに、後じゃダメなの」

「大事な話なんだよ」

「しかたないわね。なあに、聞きたい事って」

「あのな、このアニメの中の、虫のエイリアンみたいなのが、TVから出てきたりしないよな」


アリアは上を向き、幸司に言った。


「そうね、私たちに魂が宿ったんだから、あり得ない話じゃないわね」


そこは大丈夫って言ってくれよ。

これからアニメ見るのが怖いだろ。

そんなオカルト話を、幸司とアリアがしていると、2階からティアが降りてきた。


「こうじ~おなかへった」

「ティアどうした。汗びっしょりだぞ」

「ちょ、ちょっと頑張り過ぎたかも。えへへ」


こいつ、まさか今まで時間を止めようとしてたのか・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る