第2話

今、俺の目の前には、美人が二人ころがっている。

それもただの美人ではない。

アニメの中の美人だ。

信じられない話だが、大まじめだ。

なんで、普通の中の普通の男子高生の俺にこんなことが起こってしまうのか、神様がいるなら呪ってしまいたい。

まあ、美人がいるってのは、嫌なことではないが、その美人がアニメの中のキャラ設定となんか違う気がする。

それが嫌だ。

そんなことが俺の身に起こってしまったのだ。

少しくらいいい目を見てもいいはずだ。

おれは、かがんで、ある場所を覗くのだ。

これは男子高生なら、当たり前のことだ。

幸司は、自分におかしな言い訳をしながら、そ~っと覗こうとした。


「何見てんの」

「うおっ!」


幸司は後ろにのけ反り、机の角に思い切り頭をぶつけた。


「いって~っ」

「覗こうとするなんてね。信じらんない」

「うっさい。健全な男子高生はみんなこんなもんだ」


開き直ったよこの男。

まあいいか。

そんなお年頃ってやつで、今日は許してやるわ。


「幸司、おなか減ったから何か食べさせて」

「図々しいやつだな、ほんとに」


そのとき、ドアを叩く音がした。


「おはようお兄ちゃん。朝ごはんもうじき出来るから、早く起きてきてね~」


り、凛がいるのをわすれてた。

ど、どうする俺。

落ち着け俺。

今のこの状態は、絶対にばれるのはだめだ。

なら、こいつらをここから出さないようにするか。

いやダメだ。

こいつらが、俺の思う通りに動いてくれるとは思えない。

ではどうする。

こいつらがいてもおかしくない状態にする。

でも、どうやって。

それは後回しだ。

今は何とかこの場を乗り切ることに専念だ。


「へ~ぇ、妹さんがいるんだ。あいさつしてこよ」


幸司はドアを背に、立ちふさがった。


「だめだ。今は妹に会わすことはできない」

「なんで」

「なんでって、お前は馬鹿か。お前らがここにいるのがばれたらどうするんだよ」

「べつにいいよ」


お前は本当に馬鹿だな。

お前はよくても、俺はよくないんじゃ。


「ちょっとまて。今妹にばれたら、お前ら不審者扱いされるぞ」

「不審者はちょっといやかな」

「そうだろ。とにかく今はバレないようにな」

「わかったわ。でも、お腹がすいたのなんとかしてよ」

「了解だ。とりあえず二人は、クローゼットにでも隠れてろ」


クローゼットに二人は隠した。

あとは、凛だな。


「凛、俺風邪気味みたいだ。今日は学校休むな」

「だいじょうぶ、お兄ちゃん」

「ああ、だいじょうぶだ。だから凛は一人で学校にいってくれ」

「うん、わかった」


よし、乗り切った。

幸司は心の拳を、強く握った。


「それじゃ、おじやでも作るね」

「あっいや、そんなことしなくても」

「何遠慮してんの、兄妹なんだから、遠慮なんかしない。だからお兄ちゃんは、ベットで寝てまってて」

「いや、ここで待つよ」

「だめ。早く行って」


優しすぎる妹が憎い~っ


「わかった。ベットで寝て待つから押さないでくれ」


部屋の戻った幸司は、ティアとアリアに、もう少しの我慢だと伝えた。


「わかったわ。それでも、出来るだけ早くしてね。ティアがまだ寝てるのよ。私にもたれかかって。もう腕がしびれて感覚がないんだから」

「がまんしろ」


おじやが出来ると、凛が2階の幸司の部屋にやってきた。


「はい、これ食べて、早く風邪直してね」

「あ、ああ、ありがと。早く行かないと遅刻するぞ」

「うん」


凛がドアを閉めようとした時、ティアの欠伸の音がした。

アリアは慌ててティアの口を押えた。


「なにか聞こえた気が・・・」

「えっ、何かの聞き間違いだろ」


アリアはクローゼットの中で暴れようとするティアを、死なない程度に眠らせた。

凛は納得してないようだったが登校した。


「いいぞ~でてきて~」


クローゼットを開けると、どさりとティアが落ちてきた。


「ティアの奴どうした。まるで死んでるみたいだぞ」

「なんでもないなんでもない。それより、あれたべてもいい」

「食べてもいいけど、ティアの分も残しておけよ」

「わかってるわかってる」


そうこうしているうちに、眠っていたティアが起きてきた。


「おお、ティアおはよう。お腹すいただろ。これでも食べろ」

「うん」


ティアの奴どうしたんだ。

寝違えたのか、首を抑えたりして。

ティアが食べ終わると、幸司が今後の方針を語った。


「ティアとアリアは、凛が学校に行ってる間に来た、死んだおやじの知り合いで、おやじを頼ってきたことにする。いいな」

「それでいいんじゃない」

「意義な~し」


こうやって二人は、帰る方法が見つかるまで居候することになった。

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