第2話 日記

1日目

[なぜだろう、自分だけとても賢い気がする、今書いてるこの書物がなんなのかわからないけど、これを手に取った瞬間いろんなことができるようになった

道具作り、火起こし、ターザン、そして字を書くこと...

周りのみんなにはできないことだけど、自分だけ特徴が偉いっていうのはとてもいことだと思う。

だけど、自分はみんなと同じ生活をしたい。みんなと、元気に暮らしたい]


1日目のタイトルはここで終わっていた

「凄いよね〜書物を手に取った瞬間いろんなことができるって!私も手に取ったら美人になれるかな?」

と、目を輝かせてアノンは想像する...が、それを見事に博士は打ち消す

「残念だけど、この書物にはそんな力は宿ってなかったよ。まだ研究途中だからよく分かってないがね」

「でも、仮に宿ってたとしたら...なんで不猿はいろんなことができるようになったんだろう...どう見てもただのボロい塊だし...」

「グラース君。言いたいことはわかるがこれも君が知りたがってる先祖を知るための大事な資料だよ、心で思っても口には出すのはやめたまえ...」

「はぁ、誰が知りたいなんて言ったんだ...」と思いつつため息をつく

「ていうか〜思ったんだけど〜この書物って誰がなんの目的で作り出されたのかな?」

カグゥブランドのふかふかソファーでキャンディを舐めながらアノンは言った

アノンの割にはまともな意見を出すんだなと感心しつつ

「なんの目的で誰が作ったかはまだ不明だけど...日記を読んでたらわかるんじゃないのかな?勘だけど」

「それもそうだね、まだまだ続きはあるみたいだし」

と、ツタで繋がれた葉っぱをめくると続きはそこにあった


2日目

[仲間の1人が死んだ

3人ほどで木に登り木の実につられて足を滑らせ3人とも落下した

1人は川へ着水したので無事

1人はしっかり着地できたので無事

......1人は岩に頭から打って泡吹いて死んでいた

いろんな仲間がそいつの好きだった木の実や魚なんかをお供えした

とても悲しかった。悲しかったのに。この日記を書いてる間は

悲しみなんてなかった。木の実が少なくなってきたのでもう直ぐ引っ越して森林で暮らすらしい]


「仲間が死んだって...つらいな...」

「でもここでもまたおかしなことが書かれてるよ?」

博士は指をさして言った

「ここだろう?日記を書いてる間は悲しくない...確かにここはおかしいね」

「立ち直りが早いんだね〜」

とアノンは不猿が入ったカプセルを眺め、カプセル越しに手を添えた

どうやら不猿は気に入ったらしい

「書いてる間は悲しくないって...まるで操られてるみたいだな...どういうことだ...」

中央が膨らんだ包み紙を2つ取って親指と人差し指の第二関節で挟んで

包み紙を開けた

ポンッと気持ちい音がして2つ僕の口の中に入る

「.........りんごとソーダー味だなりんごはデカ森産りんご」

パッと包み紙を見ると片方の赤いラベルには[デカ森産りんご味]

青いラベルには[ソーダー味]と書いてあった

「うっし!」とガッポーズを取ると

「あ!また飴玉食べてる!ズルい!」

「さっきキャンディ食べてたろ?」

「飴玉もキャンディも同じだよ」

と博士が解説を入れる

「そんなことより早く読むよ!全く...先祖を知りたいって言うから読んだのに...」

「一切そんなことは言ってません」と心の中で突っ込みながらも

りんごとソーダーの味が口の中で広がりながらも3日目の日記を読み始めた


3日目

[一晩かけて引っ越し先の森林へやってきた

ここなら、安全に気を登れるし、木の実が多いし、魚が取れるし、まさに自然の恵みだ。

ここに来てから、仲間が火や道具を作ったり使えるようになった

おまけに、自分は何を言ってるのかわからない言葉まで話し始めた

相手が何を言ってるのかわからない、と言おうとしても伝わらない

まるで、ひとりぼっちだ。嫌だこんな生活嫌だ。

イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダモウミンナキエテシマエ]


「「「え」」」

3人の口が唖然として開いた

カンッと飴玉が床に落ちる音がする

「何これ...怖いんだけど...」

あのわんぱくで怖いもの無し!って感じのアノンでさえ震えている

「嫌な予感がする...」

博士でさえ怯えている

「.........」

読むしかない

頭の中はそんなことだけしか考えてなかった

ゴンゴンゴンゴンゴン

不猿がカプセルを内側から叩いた

ギィィィィィィィィ!

甲高い声を発した

「ん?これが欲しいのか?」

飴玉を包み紙から開けてみせると

コクコクと頷いた。どうやら欲しいのだろう

大量の包み紙を開けてバスケットの中に入れ上からカプセルの中へ入れた

美味しそうに食べている

(オマエ、イイヤツ。アリガトウ)

「!?」

不意にそんな声が聞こえた

「?...どうしたのかい?」

博士に声をかけられ我に返った

「!?...なんでもないです!」

「???...まぁいい日記の続きを読もうか」

と博士は研究机へと向かう

あれ?もしかして、あの音が聞こえたのって僕だけ?それとも......

何が何だか分からず、ボリボリと不猿が飴玉をかじる音だけが聞こえていた

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