第5話:ギルドにて。(こういう奴か…)ボソッ

 大通りを進むと直ぐに、門番さんが言っていた建物を発見した。


 冒険者ギルドは周りと比べて一際大きな建物で、ゲームなどで見かける「館」のような外装だ。多くの人が出入りしていて、街の中心的建物だということが分かる。




 周りの荒々しい雰囲気に気圧されそうになるが、振りのけてドアを開ける。


 “チリンチリン”


 という綺麗な鈴の音とは対照的に、いかつい体つきをした男達の鋭い視線が俺に突き刺さる。思わず「うわ、、」と声を漏らしてしまった。




 今更ながら、俺の服装は如何にも旅人と言った感じで、動きやすい服装の上に黒のローブを着ている。お世辞にも強そうには見えないためか、興味をなくした人達が俺から視線を外す。


 が、1部の人はまだ俺のことを嫉妬しているような目で見ている。


 やはり、設定通りイケメンなのだろうか…。




 止まっていた足を進め、受付嬢のいるカウンターへと向かう。


「ようこそお越しくださいました。本日は何のご要件ですか?」


 俺が向かった先で、中学生位の小さな女の子が応対してくれた。


 しかし、あまりに幼いので、一瞬俺の動きが止まる。


「…。ちっ。」


 今絶対舌打ちした。俺の心が読めるのだろうか。これ以上怒らせてはいけないと俺の危機管理能力が告げる。急いで言葉を返す。


「今日は冒険者登録をしたくて。」


「左様ですか。登録には費用として1,000ゲルかかりますが、よろしいですか?」


 うげ。お金かかるのかよ。って、俺が設定したんだった。仕方がない、アイテムボックスには金貨が1枚しか入っていなかったが、足りるだろうか。


「すみません。遠いところから来たもので、お金の価値がよく分からないのです。金貨1枚は何ゲルになりますか?」


「?お金の価値はどの国も全て同じはずですが…。金貨1枚では1万ゲルになります。他にも小さい方から銭貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨がございますが、最初から、1、100、1,000、10,000、1,000,000ゲルとなります。」


 何だかんだで教えてくれた。いい人のようだ。よし、金貨1枚で足りるな。設定通りだ。


「それではこれでお願いします。」


 そう言って金貨1枚をアイテムボックスから取り出し、小さい受付嬢に渡した。面倒な事を避けるためポケットから取り出すフリも忘れない。


「9,000ゲルのお返しになります。次に登録者用紙を記入してください。」


 渡された紙を見ると「氏名」「年齢」「職業」「使用武器」の欄がある。


 氏名は佐野さの 柚月ゆづき、年齢は17、職業は無し、使用武器の欄には長剣と書いておいた。


 書いている最中に何人もの職員が怪訝な顔をしながらこちらを見てきたが、理由が分からなかったので気にしないでおく。




「書き終わりました。これで大丈夫ですか?」


「あっ、はい。大丈夫です。最後に適正ランクを測るために模擬戦の実技試験を受けていただきます。本日も実施されていますが、いかがなさいますか?」


 適正ランクを測るのか。これは軽くイメージをしていただけなのに、実装されているんだな。ちなみに、設定通りであれば最低ランクがG。


 最高ランクがSのはずだ。


「はい。今日受けさせていただきます。あと、ランクの説明をお願いしてもよろしいですか?」


「かしこまりました。冒険者にはG~Sランクまでの階級が存在します。クエスト達成実績などからギルドが判断、その後昇格試験を提示し、合格し次第ランクアップになります。Cランク以上になると、指名クエストが発生します。拒否すると、状況に応じてペナルティが課せられ最悪の場合登録剥奪となるので注意してください。なにか質問はありますか?」


 これも設定と変わらないようだ。


「大丈夫です。」


「それでは、今から試験官となるCランク以上の冒険者を探してきますので、少々お待ちください。」


「分かりました。」




 小さい受付嬢が去った後、自分の持っている武器を確認する。


「鉄の長剣」


 これだけだった。1戦を交えるだけであれば十分だろう。あとは待つだけだ。




 しばらくすると、小さい受付嬢が先程からこちらに嫉妬の目を向けてきていた目つきの悪い冒険者を連れて戻ってきた。


「お待たせ致しました。今回の試験は強い希望により、こちらのガークさんに担当していただきます。冒険者ランクはCです。」




「殺しはしないから安心しな。顔が整ってるだけじゃどうにもならないことがあるって事を教えてやるだけだ。まぁせいぜいFランク位にはなれればいいな!ッケケケ。」




 あーこういうやつですか。俺が軽くイメージしてた「ざまぁ系」のテンプレ通りなら適当にやっても勝てるだろう。


「はい。どうぞお手柔らかに。」




 柚月はつまらなそうな顔をしながらガークと小さな受付嬢のあとに続き、闘技場へ向かった。


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