第4話:入場だ!あれ、俺、視線だけで殺されそう
あれから少し歩いた所でようやく街の入口まで辿り着いた。
どうやらあのバカでかい門が関所の役割を果たしているようだ。
それにしてもあれ程大きな門はイメージしてなかったはずなんだが…。
そんな事を考えつつ、しばらくすると俺の番がやって来た。近くで見るとよく分かるが、門番らしき男の人がめちゃめちゃでかい。190cmはありそうな筋肉ボディから放たれるこの鋭い視線だけで殺されそうだ。俺の体、穴空いてないよね?
「身分証の提示と、ローガリックへ来た目的を教えろ。」
えぇ。凄く高圧的なんですけど…。はっきりいってとても怖い。
そういえば思い出した。“ローガリック”というのは、最初の街だからレベルが低そうなのと、お昼に食べたガーリックパンが美味かったからつけた名前だ。
もう少しまともに付けておけば良かったと反省する。
「何だ。早くしろ。」
「あっはい。ここに来る途中で盗賊に襲われて身分証を無くしてしまいまして…。元々旅人として自由に活動していたので、新しくまた身分証を作るためにこちらに寄らせていただきました。」
恐ろしい程スラスラ嘘がつける。やはり小説用に用意していたセリフだと完璧だ。
「盗賊?詳しく教えてもらおう。中に入れ。」
あれー。何かとてつもなくめんどくさい事になってるんですが。「それは災難だったな。」とかいって入れてくれないんでしょうか。
頭の中でグチグチ文句を言いつつ門番さんの後ろについて行く。勿論面と向かって文句を言う程命知らずではない。
「座れ。まず単刀直入に言っておくが、ここに連れてきたのはお前が怪しいからだ。盗賊について聞くつもりは無い。犯罪歴を確認し、あった場合は直ぐに捕まえる。分かったな?」
あ、やばい。俺、すごく疑われてます。まぁ犯罪をしてる訳じゃないから大丈夫だけど。それにしても心臓に悪い。何もしてなくても警察を見るとビクビクしてしまうあの感じだ。日本では警察のお世話になる事などほとんどなかったのに…。
「分かりました。そちらの水晶玉に触ればいいですか?」
近くにあった水晶玉を指差して尋ねる。
「そうだ。」
犯罪歴があったらここで死ぬな。と思いながらもそっと手を乗せる。勿論水晶玉に変化はない。一安心だ。
「ほう。疑って悪かったな。犯罪の芽は早いうちに潰さないといけないもんで。これも仕事なんだ。」
そう言って門番さんは初めて笑顔を見せる。先程までの怖さはどこに行ったのか、とても優しい笑顔だ。
「いえ、お気になさらず。それではローガリックへの入場は可能ですか?」
「おう。中に入った大通りを真っ直ぐ進め。しばらく歩いたら一際立派な建物があるはずだ。そこの冒険者ギルドでギルドカードを発行すれば身分証として使えるぞ。」
「分かりました。ご親切にありがとうございます。」
よし。ひとまず街には入れた。ずっと緊張しっぱなしだったが、親切な門番さんで良かった。教えてくれた通りに冒険者ギルドに行くとしよう。
そういえば、歩いて感じたのだが街の女性達からチラチラと視線を向けられる。柚月の容姿のせいなのだろうか?設定では175cmの細マッチョで、黒髪蒼眼、中性的な顔立ちのイケメンだったはずだが…。
登録が終わったらすぐに宿で確認しよう。この世界でリア充になれるかどうかの大事なポイントだ。設定通りであれ!
そう期待する心を胸に閉じ込め再び歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます