15.

「何言っているんですか?あなたは何も出来ない。ここでみんなと朽ちていくだけなんです」

「悪いな、お前と心中してやれなくて。ここから出て俺は授業参観とやらに行かなくちゃなんねえんだよ」


 そう言って俺は腰に差していた彼岸を抜き放つ。


「最初からヒントは出ていたんだ」


 そう、最初から何をすべきかは記されていた。

 俺は春野に寄っていく。

 刀に気を取られて気圧された春野が目を見開いている間に、俺はその手にあったスケッチブックを取り上げる。


「何をする、返せ!」

「ここはお前の想像で作られた空間なんだったな。じゃあこんな空想も有効なんだろう?」


 俺は言い聞かせるように口を開く。


「このスケッチブックは燃える。跡形もなく」

「……やめろ」


 春野がぶるぶると震え始める。しかし、俺はやめない。

 気分が悪いが、ここでやめるわけにはいかない。


「憎しみも悲しみも。……全て、燃えてなくなるんだ」

「やめろ。やめて!」


 その言葉が最後だった。

 俺の手の中でスケッチブックが燃え上がる。

 俺はそれを床に放り投げた。


「ああ……。なんてことを……!」


 春野がそれに取り縋る。


「これで良かったんだよ、春野。永遠なんてないんだ。俺も、お前だって」


 俺は春野を見下ろしながら告げた。


「どんな酷いこともいつか終わる」


 春野が顔を上げる。

 気のせいか、俺の願望かも知れないが。

 その顔は確かに笑っているように見えたんだ。

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