輪郭Ⅱ
例えば、灯りを消して風呂に浸かること。窓から差し込む僅かな光に反射する水滴の煌めきを、本当の銀河だと、信じてみること。
見上げた天井を無数の星屑だと、信じてみること。
誰か1人の人を信じてみること。
愛してみること、憎んでみること。
目を閉じてみると、小さな四角があるだけでした。
目を開けても、小さな四角があるだけでした。
その中を、濡れた蟻んこが這い回っているだけでした。
さらにその上に、濡れた銀河があるだけでした。
そして、さらにその上には濡れた神さまがいるだけでした。
誰か1人の人を信じてみること。
愛してみること、憎んでみること。
星屑の彼方にも、私と同じ誰かがいること、いるだろうと夢想すること、願ってみること。
私も星たちと同じこと、同じだろうと夢想すること、願ってみること。
小さな四角の中で、祈ってみること。
私の人生が、この小さな四角の中で流転していくことを、知ること。
不幸せだということ。
不愉快だということ。
哀しいということ。
憎いということ。
愛しいということ。
楽しいということ。
幸せだと、いうこと。
守られているということ。
小さな四角の中で、誰か1人の人を信じてみること。
愛してみること、憎んでみること。
濡れた這い回る蟻んこを、見下ろしてみること。
顔を上げて、星空を見てみること。
その上に佇む、大きく広い別の誰かと、目を合わせようとすること。
目を閉じてみると、小さな四角があるだけでした。
目を開けても、小さな四角があるだけでした。
例えば、灯りを消して風呂に浸かること……
窓から差し込む僅かな光に反射する水滴の煌めきを、本当の銀河だと、信じてみること……
見上げた天井を無数の星屑だと、信じてみること……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます