忘れない、またここで
わたしたちは忘れない。
茨にみちた途をゆく
陽だまりの母親と、
教えを産んだ、あの荒野。
もうあの刻には、あの世界には戻れない。
優しい太陽を一緒に見上げて笑った、教えを一緒に開いてそんなことないと笑った、
あなたたちとの日々。
未来のざわめきが聞こえる。
色々な顔がわたしたちを、見ている。
わたしたちを、こうして待っている。
愛だけで、わたしたちは強くなれる。
あの太陽を見上げる歓びを、
教えをまた開く恐ろしさを、
確かに抱きしめて。
思いが溢れる。
この手は汚れている。
誓いを立てるそばから、それは決して果たされないだろうと笑った。
いまはまだ、微睡みのなかにいる。
醒めるような水で、それをこじあけようとする。
ここから、抜け出そうとする。
過去も未来も、神も悪魔も、教えも、わたしたちも、あなたたちも、
ただ通り過ぎてゆく。
愛だけで、強くなれる。
たとえ、生と死が厳しく別け隔てても、
この場所でめぐり会いたい。
どこまで来ただろう。
ここまで来ても、まだたどりつけない 。
哀しみが雪のように降り積もって、孤独の結晶をつくる。
悪魔のふりをしたこともある。
神だとうそぶいたこともある。
そうやって、切り裂いた歌を
哀しい嘘と虚ろな音から、
歓びに満ち溢れた本当と、これ以上なく広がってゆく美しい音楽にしてみたい。
あなたを忘れない。
わたしは茨にみちた途をゆく。
未来のざわめきが聞こえる。
色々な顔が、わたしをこうして待っている。
愛だけで、わたしは強くなれる。
あの冷たい結晶を、束の間癒してくれる。
泣けてくるほどの小さな歓びを、
両親の手を握るように、あなたを握るように、
抱きしめたい。
こうして原罪に囚われても、生きてゆける。
確かに、生きてゆける。
いまはまだ想像もできない。
この教えの愛と深さと残酷さの中で、
生きつづける。
あなたを忘れない。
愛だけで、わたしは強くなれる。
茨にみちた途を歩きつづけてゆく。
過去の淵が遠ざかる。未来が口をあけて待ち構える。
生と死が厳しく別け隔てても、
それでも、この場所でまたあなたと、わたしはめぐり会いたい。
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