第8話

 ……くどくどくどくどくどくどくどくど。


 あれからエブ◯スタちゃんは、カク◯ムちゃんを小一時間ほど問い詰めていました。

 カク◯ムちゃんは、いつのまにか絨毯に正座をしつつ、俯きながら生気のない顔で聞いています。

 な◯うちゃんはエブ◯スタちゃんの説教を止める事も、カク◯ムちゃんを助けて慰める事も出来ずにオロオロしていました。


 そんな三人の様子を部屋の隅から眺めていた電◯ちゃんは、ある異変に気がつきました。


(いけないわ! カク◯ムちゃんの耳の穴から黒煙が噴き出し始めている!?)


 見れば、死んだ魚の目のようになっていたカク◯ムちゃんの左右にある耳の穴から、ブスブスと黒い煙が立ち昇っているではありませんか。

 それは真っ黒なオーラのようにカク◯ムちゃんの背後へと広がっていきました。

 な◯うちゃんも、その異変に気が付いたようです。

 彼女は慌ててエブ◯スタちゃんを止めようと声をかけます。


「エ、エブ◯スタちゃん! も、もう……その辺で勘弁してあげて!?」


 しかし、瞼を閉じて説教をしていたエブ◯スタちゃんは、未だに黒煙に気が付いていませんでした。

 そのまま彼女は、な◯うちゃんの方にも厳しい顔を向けます。


「な◯うちゃん、ダメよ? 甘やかすのはカク◯ムちゃんの為にも良くないわ。まったく……なぁにが『そんな終末を迎えない為にも我が身を削って頑張っているのよ』なのよ。聞いて呆れ……」


 カチャ……。

 ターンッ!


 びしゅっ!


 銃声が響いてエブ◯スタちゃんの額から後頭部にかけて風穴が開いてしまいました。

 彼女は床に倒れてしまいます。


「ひぃっ!?」


 な◯うちゃんが短く悲鳴をあげました。


「カ、カク◯ムちゃん!?」


 電◯ちゃんは慌ててカク◯ムちゃんの方へ顔を向けます。


 カタカタカタカタカタカタ……。


 カク◯ムちゃんは両手を震わせつつも、しっかりと拳銃を握りながら構えていました。

 銃口から、わずかに硝煙が立ち昇ります。


「お、お喋りが得意みたいだから……く、口を二つ増やしてあげたわ!」


 カク◯ムちゃんの目が血走っています。


「ど、どうしたの? せっかく口を増やしてあげたんだから、なにか喋りなさいよ!?」


 横になったままで動かないエブ◯スタちゃんは、無言です。

 カク◯ムちゃんは、ゆっくりと力が抜けるように腕を下ろして拳銃を床に落とすと、エブ◯スタちゃんを見下ろしました。


 段々とカク◯ムちゃんの口角が、あがっていきます。


「……うふ……うふふ……あははっ……あーはっはっはっはっはっ!」


 ……ここはweb小説サイト界。


 カク◯ムレーベル国の中央にある、お城の中から女の子の高笑いが聞こえてきます。


「えひゃーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」


 彼女の名前は……。


 ◇


「あー、死ぬかと思った……」


 エブ◯スタちゃんは床に胡座をかきながら呟きました。


(むしろ、なんで生きていられるの!?)


 電◯ちゃんは驚愕の瞳でエブ◯スタちゃんを見つめます。


 な◯うちゃんはエブ◯スタちゃんの近くで絨毯の上に正座をしたまま、エブ◯スタちゃんの額と後頭部の穴に白い軟膏を塗っていました。

 エブ◯スタちゃんは再び呟きます。


「オ◯ナインが無ければ、即死だった……」


 な◯うちゃんは軟膏を塗り終えると、電◯ちゃんに尋ねます。


「そういえば……カク◯ムちゃんは、どこに行ったの?」


 電◯ちゃんは苦笑いしながら答えます。


「パトカーに乗せられてね……」


 ◇


 カク◯ムレーベル国とは違う国。


 その警察の取り調べ室にある椅子に座って、カツ丼にがっつく可愛らしい女の子がいました。


 机を挟んだ向かいにも一人の女の子がいます。

 その少女は紺色の制服に身を包み、頬杖をつきながら向かいの女の子の食べっぷりを呆れて見ていました。


 制服の女の子はオレンジ色をしたショートボブを二つの黒いヘアバンドで抑えています。

 彼女は食事を終えた少女へ話しかけます。


「カク◯ムちゃん……もう二度と、こんな所に来ちゃダメだよ?」

「うん! ごちそうさま! ありがとう、アル◯ァポリスちゃん!」


 カク◯ムちゃんは、ご飯粒を口の横に付けたままで……にぱっ! ……と笑いながら、制服姿の少女アル◯ァポリスちゃんに、そう答えるのでした。

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