第7話
「そもそも何で恋愛とホラー・ミステリーは、大賞が無かったのよ?」
エブ○スタちゃんは疑問に感じたことをカク○ムちゃんに尋ねました。
「いやあ〜、丁寧に描かれた読み応えのある作品や真っ向勝負の意欲作が多かったんだけど、みんな素晴らし過ぎて頭一つ抜きん出た作品が無くて……」
なぜか揉み手をしながら答えるカク○ムちゃんです。
「最終候補作の中から、レビューの星評価が高かったりフォロワー数が多かったりした作品を選べば良いだけじゃない……何の為の読者選考よ?」
(うぐっ……)
「ど、読者選考は、あくまで中間選考だから……最終選考の判断材料にするのは、いかがなものかなあ〜? ……って、思ったの」
「ふーん」
エブ○スタちゃんの冷たい視線に晒されたカク○ムちゃんの額に汗が滲んできました。
「それに、カク○ムちゃんは最終選考に残ってくれた作品に編集部から個別の選評とか送らないの? それって参加してくれた人達に冷た過ぎない?」
「それは誤解よ!? エブ○スタちゃん!」
カク○ムちゃんは右の掌を挙げて、ちょっと待ったのポーズをしました。
「あたしは作者の人達の個性を大事にしたいのよ。各自の持つ魅力を自分で磨いて欲しいから、敢えて影響を与えてしまうようなアドバイスは送らないのよ。ドゥー・ユー・アンダスタン?」
「……その割には書籍化が決まってから刊行までの期間が長過ぎない? 担当編集者と打ち合わせしまくりのアドバイスされまくりじゃないの」
「そ、それは……やはり書籍を流通にのせるにあたっては、売る為の努力が必要不可欠だから……」
「……本音は?」
「……あたしの所も人数カツカツで、やっているから……なかなか思うように手が回らなくって……」
「きちんと事務処理できる範囲の身の丈に合ったコンテストをすれば良いだけじゃない」
(ぐぬぬ……)
カク○ムちゃんは悔しそうに固く唇を噛み締めます。
エブ○スタちゃんは大きな溜め息を一つだけ吐くと、瞼を閉じて人差し指の先を上に向けて左右に振り始めました。
「だぁいたい、いっつも、カク○ムちゃんは……」
くどくどくどくどくどくどくどくど……。
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