深海シティ4cb8e7 (完)
作者さま:戒めツブヤ
キーワード:SF ディストピア 海
あらすじ
海面の上昇によって地球上の陸地がすべて水没した未来。
人類最後の生活圏は、南極の冷たい海に浮かぶ氷上国家。
その中では海中に適応できる「人魚」を生み出そうと研究が続けられていた。
厳しい管理と、隠された実験。
主人公たちは社会に翻弄されてゆく。
感想
まず、人類を人魚にしていく途中、という設定がおもしろい。1話めから引き込まれる。
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白い髪に金色の瞳、この国の人口の八割に至るその配色を持つ人々は、人魚の成り損ない――〈テンシ〉である。クジラと人間の遺伝子を半分ずつ持っている半魚人は、姿形は眼と髪色以外大差ないが、海の中で長時間息が出来たり、寒さにとても強かったりという身体的特徴を持っている。
人魚の成り損ない。
そう、この国は人魚に成ろうとした。人魚に成るために建てられた国なのだ。
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いい文章ですよねぇ、序盤から作品の個性がググっと伝わってくる。白い髪・金色の目・クジラの遺伝子……頭のなかでイメージが膨らみます。
また謎と危険だらけの物語が極寒の舞台によって一層引き立てられている印象
全編を通して良い緊張感と幻想的な雰囲気
氷・吹雪・冷たさ、こういう単語が持つイメージってあるもの
大げさに描写しなくても自然とディストピアらしい空気が作られている
さらに、都市を支える巨大氷もどんどん溶けてきているらしく、そもそも国レベルで時間がない。
主人公たちだけでなく、国家全体の結末も気になってしまう
設定まわりが見事なセンスです
加えて1つ1つのシーンも美しく、特に海中のシーンは作者のこだわりを感じました
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彼は、海遊が大好きだった。時間を見つけては海の中に潜り、この非常に冷たい海域に住む生き物を愛でている。
この冷たい海にはシャチやクジラなど、二十三種類の水棲哺乳類がいるが、彼の目当てはそれらではない。オワンクラゲやカブトクラゲ、そういった発光生物や、ウミウシと呼ばれる非常に小さなナメクジのような生き物だ。
ウミウシを見つければその岸壁にへばりつき、光るくらげを見つければぼうっとその景色を眺める。
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水中の表現だけでなく、海の生物の固有名詞が出てくるのがリアリティ。なんというか描写が細かい。作者さま自身の海好きが伝わってきます。
また、メイン5人の日常パートはとても仲良しでほっこり。隠れ家的なバーで過ごす仕事終わりの時間、そこで出会った友人たちと遊びに出かける友人。ロマンでしょう。
ディストピア系作品にふさわしく、主人公たちも割といろいろと隠し事をしてるんですよね。友人にも話せない秘密がある。だけど互いにそれを察していて、それでも一緒にいる時間を心から楽しんでいる。
そして日常パートが明るいからこそ、それが崩壊していくのがつらく、何とか友人を助けようとするのに強く共感。メリハリが効いている、というか。
最終的な終わり方も個人的には好み。余韻がありますねぇ。
味わい深い状況設定をしっかりと書ききった作品です。
状態:完結
文字数:139,024文字
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
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