魔法少女 ミラクル★オラクル 最終話「正義が、愛に敗北する日」 (完)
作者さま:呼吸する器具
キーワード:SF 魔法少女 バトル シリアス
あらすじ
突如として人類を攻撃してきた超存在「戒獣」たちを、魔法少女は自分の存在そのものを犠牲に撃退した。残されたのは人々が魔法少女を忘れた世界。その中でただ一人だけ、彼女を忘れなかった少年は何を思うのか?
感想
すでに魔法少女が犠牲となって消えてしまった時点から始まるのがおもしろい。世界中の人々が彼女を「世界を救う魔法少女」としか見なかった状態で、1人だけ対等な人間として友情と恋を育んでいた主人公。自分だけが「万理」を覚えてる状態で、何とか思いを受け継いで前向きに行こうとする心理描写が魅力的。
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ビッグな夢があるわけじゃない。自分の将来なんて、前の宇宙では考えたことがなかった。その余裕もなかった。
やりたいことを無理にでも思い浮かべるとすれば、それは万理の最後の望みを叶えることだ。
あいつは俺にも、この平和の中を生きてほしかった。この当たり前の平和。退屈で、凡庸で、誰も有難がらなくて、でも前の世界じゃ誰もが求めて止まなかった平和。クソつまらない日常をクソつまらない人間として生きられる幸せを、人々が全力で享受してくれるのが万理の望み。
だから、寂しいとか思ってはいけない。
あいつの末路に、悲しみや怒りを抱いてはいけない。
笑え。
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「彼女が自分の幸せを願った」のだから、「自分は幸せにならなければいけない」。こういうの好き。
そして、もう片方の主役である魔法少女の万理さんも実に良いキャラしてます。たった1人で人類を救う責任と重圧に耐えられるだけの超人的な善良さ。しかし、怒り・悲しみ・あきらめなどの人間らしい感情もしっかりと持っていて親しみやすいというか。けっこう下ネタとかも言っちゃったり。
また、過去の情報として挿入されてくる戒獣と魔法少女たちの描写はダイナミックで迫力満点。
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七歳の幼女が、目の前で家の半分ごとバケモノに両親を喰われ、引っ張って逃げようとする俺の腕から掻っ攫われて、自分も家の残り半分ごと喰われた。
忘れ得ない。体内に無限の空間を持つ戒獣、ヒルベルト。大小数万にも及ぶ立方体で構成された、長大無機質な銀色の龍。飛んできた一辺四メートルくらいのキューブから、水銀みたいな触手が伸びて人を絡め取って飲み込んでいった。あの頃人類にはまだ戒獣への対抗手段がなかった。だから間一髪で助けてくれる魔法少女なんてのもいなくて、両親と八紘は助からなくて。ああ、ああ。
「どしたのカズ兄、肩ぷるぷるしてるよ。具合悪いの? 風邪ひいた?」
八紘の声は昔と変わっていない。この声で、俺の手からもぎ取られた七歳の八紘は泣き叫んでいたのだ。やだああカズにいたすけてたすけて――叫びながら呑まれていった。何年も悪夢に見続けた。
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戒獣たちの異質さと脅威が伝わってきて、バトルシーンもすごく楽しめます。どいつもこいつもエグいエグい。
各種用語・論理なども上手く組み立てられていてSFとしての雰囲気付けもばっちり。魔法少女が「魔法少女」である理由もちゃんと書かれており作者さまの丁寧さが感じられますね。
そして、終盤の展開とタイトルもすばらしい。怒涛の展開を読み終わってみれば、なるほど。確かに本作品は
魔法少女 ミラクル★オラクル 最終話「正義が、愛に敗北する日」
ですねぇ。これだけタイトルが内容を適切に表している作品も珍しい気がします。これ以上のタイトルはまったく思い付きません。
キャラのセリフ回し、用語の使い方、物語の構成、バトルシーンの迫力……すべてが高水準な作品です。
状態:完結
文字数:160,935文字
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
◎ 高い完成度!
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