魔王少女と呼吸の生徒会 (完)
作者さま:インク
キーワード:ゲーム 高校生 シリアス? 性描写あり
あらすじ
とある出来事がきっかけでスピーチの練習をすることになった主人公。美少女な生徒会長に手伝ってもらうはずが、彼女がゲームをしようと言い出し……? 重なり合う物事、それらの真相とは。
感想
ゲーム中の謎めいた空気が独特で魅力的。お互いを魔王と勇者に見立て、スマホゲームの指示を実行。それを成功か失敗で評価していくのだけど……?
混乱、怒り、楽しさ……主人公の気持ちが上手く書かれていて読み進めてしまう。
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『ゆうしゃ の こうげき ゆうしゃ は まおう の むね を さした』
読み間違いを期待して、もう一度読み返してみたものの、淡々とした単純なひらがなの列にあやまりなどなかった。
なぜわざわざ部位を指定してくるのだろう。胸じゃなくて、せめて肩や腕ならよかったのに。
いや、理由は何であれ女の子の体に勝手にふれて許されるわけがない。
僕は笑い声を作って彼女を見た。人が悪いですよ生徒会長、もう僕の負けでいいですから、二人だけでスピーチの練習をはじめませんか、そんな言葉を伝えようとした。
視線がぶつかる。闇色とでも名づけたくなるほど黒い瞳が、僕の喉の奥から声を奪う。
魔王のように冷徹な視線が、僕から『逃げる』の選択肢を奪う。
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僕は鼻から大きく息を吸って、イメージを固める。
ここはゲームの世界。僕は勇者。目の間には魔王。
そしてゲームのキャラクターのように、メッセージに表示されたことを忠実に実行する。
僕は魔王に近づき、魔王の体に両手をまわして、強くしめつけた。
その刹那、嗅覚が刺激された。キャンディーの詰まった
次に肉体の感触が伝わってくる。モデルみたいに細い体、でもそこにある確かな柔らかさ。
無意識に僕はしめつける力を強めた。
「────っ」
魔王はダメージを受けている。
「あ、ごめん」
僕は手の力を緩めた。
「ダメよ」厳しい声が上がる。「それは認めない」
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序盤はほぼ2人のやり取りだけで進行していくのだけど……何ともミステリアスで一気に引き込まれてしまう。美少女と2人っきりで遊ぶ、ラッキーな状況のはずが? 逃がさない生徒会長と逃げられない主人公。たった2キャラだけでここまで展開を膨らませられるとは、作者さまの構成力は相当なものです。途中でエロいシーンがあるのは注意。
また主人公が勇者あつかいされている理由と、真相を知っている彼自身の内心の葛藤も丁寧。予想外の展開で勇者になってしまった気分とは。
「ゲーム」の使い方もめちゃ上手い。物語は『ゆうしゃとまおう』というスマホゲームを利用して進んでいくし、過去編に出てくるRPGの使い方にもうならされます。すごいセンス。
そしてオチが良い。賛否両論ありそうだけど、私はかなり好きなタイプの終わり方。読者も登場人物たちも気付けていない。シンプルながら強烈な余韻がある。
全体を通して、ものすごく上手い。小説を書く能力が高くないとこの物語は作れませんよ。
状態:完結
文字数:106,036文字
個人的高評価ポイント
◎ 高い完成度!
作品URL
小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n9144bi/
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