その色の帽子を取れ (完)
作者さま:梧桐 彰
キーワード:サイバーセキュリティ ハッカー 人間ドラマ シリアス 友情
あらすじ
2019年。加速するサイバー犯罪に対抗できる人材が求められている世界。サイバーセキュリティ製品をあつかう主人公「ショウ」は、かつて同僚だった「サク」を探していた。ようやく再会したものの彼は犯罪者になっていて、さらに東京で大規模なサイバーテロが発生し……!?
感想
SFではなく既存技術を題材としたハッカーたちの物語。作者さまは現役のIT関係者であり、内容が本格的で厚みがあります。その分だけ細かいので、まったく知識が無い人はやや読みにくいかもしれませんが……説明が上手いから気にならないのでは。
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ブラックホールというのはこの業界では天文学の話ではなく、アプリケーションを攻撃するウェブサイト上のサービスのことだ。使い方は難しくなく、子供でもやり方さえ教え込めばハッキングができるようになる。
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そんなサービスがあるとは! 怖い! 読んでると色々と勉強になる。色々とな攻撃方法と、様々な防御法。非常にしっかりした業界ものです。
もちろん、知識をダラダラと並べるだけの退屈な作品ではありません。ストーリも序盤から緊迫感があり読み進めちゃいますね。
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え、ただいま総理からありました通り、『ナイアルラトホテップ』を名乗るハッカー集団より声明が出ました。昨日から東京23区を中心として、医療、交通、電気ガス水道などへ集中的な攻撃が繰り返され、利用できない状態が続いておりますが、いずれもこのハッカー集団によるものとのことです。
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いきなり東京がサイバーテロで壊滅した部分からスタート! 死者1万人! 何がどうなったのか、グッと引き込まれます。
そして「サイバー犯罪でも人が死ぬ」という危機感を提示してくるのも良い。私みたいな一般人だと、どうしてもサイバー犯罪を軽く見ちゃってる気がするので。こういう風に「ネットの中だけで終わる話じゃない!」と見せられると物語に迫力が増します。
ウィルスと攻防するシーンも非常に上手い。ぶっちゃけ「どれだけすごいのか」を理解できる人は少ないでしょうが、知識が無くても「何となく超すごい」とは理解できる。すばらしい筆力です。
あとタイトルが見事。IT関係の言葉を使って内容を適切に表しつつ、詩的な雰囲気も感じられる。
ストーリー展開も本当に迫力がある。出会いと別れ、成功と崩壊、正気と狂気、白と黒……特に事件が起きてからの緊迫感には引き込まれます。読んでて辛い重苦しさ、でもだからこその魅力が……それにしても重苦しい。
しっかりした専門知識、そして交錯する人間関係と真実。とても良質な現代ものです。
状態:完結
文字数:138,485文字
個人的高評価ポイント
◎ 高い完成度!
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