旅は竜連れ世は情け  (完)

作者さま:冬野瞠

キーワード:ファンタジー 竜 バディもの


あらすじ

片腕の少女「アイシャ」は、右目を失った竜「ジーヴ」と共に旅する契約を交わす。少女は生き別れた兄を探すため、竜は一族の生き残りを探すために。人間の町と竜の群れ、2つの場所は同じ日に襲撃された。はたして望む相手は見つかるのか? 敵の正体は?


感想

丁寧に書かれた王道ファンタジー。偉そうな竜に胆のすわった少女、凸凹コンビだけど絆はある。定番の雰囲気だけどすばらしい関係性です。


~~~


おそらく人間ならば、意を決して助けに行くのだろうとは思う。しかし、竜は人間を助けない。小娘にも言ってある。共に旅をしてきた相手が仇の手に落ちたからといって、義理立てする必要もなかろう。あの小娘は仲間や相棒などではなく、ただの非常食なのだ。

 そう、この俺の、非常食だ。

 きびすを返す。目的地を元の宿に据える。大きく欠伸をし、肩をぐるぐると回し、ごきごきと首を鳴らす。

 今夜はたっぷりと眠らねばなるまい。

 夜が明けたら、思う存分大暴れできるように。


(中略)


「さあ、返してもらおうか。俺の非常食を」


 猛々しい外見に反し、よく通り品のあるバリトンで、竜はのたまう。


「小娘はどこにいる。無益な殺生をしたくはない、教えろ」


~~~


なんだかんだ助けてくれるっていうね(笑) 相棒じゃなく非常食だけど盗むことは許さない。ツンデレとは違いますが、こういうの良いですね! お互いに少し素直じゃない関係性!

そしてメインの2人だけでなく、世界観としても海と大陸が関わってきて広がりを感じられるのが良い。


~~~

兄は船乗りだった。漁師というわけではなく、王立学術協会アカデミーから資金提供を受け、海洋調査をしていた。そして同時に、兄は竜の研究者でもあった。

 竜と海。二つの関連があたしには見当もつかない。兄は多くを語らなかった。仕事についてあたしが尋ねると、兄はいつだって困り顔で笑うのだった。だから、あたしもそれ以上は聞かなかった。


~~~


はたして兄の研究とは? 途中で明らかになるんだけど、なかなかに壮大です。文字通り世界が広がる。竜にふさわしいスケール感がある設定。

あとタイトル・各話のネーミングもステキ。旅は竜連れ世は情け、情けは竜のためならず、苦しいときの竜頼み、竜の手も借りたい……ことわざを上手く改造しててユーモアたっぷり。

文章力が高く、とても上手くまとまっている作品です。


状態:完結

文字数:92,819文字


作品URL

カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054881120287

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る