第26話' まごころを、君に

いきなりの映画の最後から語りだします。


というのもたった今、この作品を20年ぶりに見たからですね。

大丈夫他の話もちゃんと語るから。


でも、この話は今すぐ語るしかない……。


心が、心がとても痛い。


庵野の庵野の気持ちが痛いように伝わってくる、中学生の時にはわからなかった庵野の思いが、恐ろしいほど俺の心の中に濁流となって流れ込んでくる。


だめだ、こんなもんを作ってしまった庵野は本当にダメだと思う。


 この作品は実は内容的には、アニメ版の25話と26話と全く言いたいことが同じである。

 しかしこの「まごころを、君に」はそれ以上に鋭角で俺らエヴァンゲリオン世代に突き刺さってくる!

 エヴァ世代で、そして俺と同じように独身の人間は改めて、これを見たほうがいいかもしれない。いや、見てはいけないかもしれない。

 庵野の濁流がひどく流れ込んできてしまう。


 よほどの孤独を庵野は感じ続けて生きてきたんだろう。


 そして俺もまた、今に至るまでずっと孤独を抱えながら生きてきた。

友達とか、彼女とか関係なく、庵野も俺も孤独を抱えながら生きてきた。

 この孤独感は十代の時には気づけない……。


 なんのことはない。この作品は少年に向けた成長の話ではなかった。

 庵野が自分自身に向ける後悔と、内なる本当の想いを吐露しただけの私小説だったのだ。

 アスカの最後の「気持ち悪い」という言葉がアドリブだったというのは有名だ。


 そりゃあそうだ。

 庵野秀明が心に抱える、すべての思いを表に出してしまったこの作品をすべて見せつけられてしまった、宮村優子の感想は、そりゃあ「気持ち悪い」しかないだろう。


 おれもまた、気持ち悪いと思ったし。


 庵野に共感した自分をまた気持ち悪いと思った。


 この孤独感とは、圧倒的に女性に拒み続けられた庵野の熱い情念の吐露なのだ。しかし、決して庵野が持てなかったわけではない。

 庵野がすべて(母としての存在)を女性に求めようとした結果、拒絶された歴史をアニメーションに託したものなのだろう。

 俺にはそう映った。

 なぜかというとハイロック自身がそういう存在だからだ。

 女にすべてを求めようとして、しかしそれを決して表には出さないようにしながら、そして自分勝手にそれをあきらめ打ちひしがれ、諦観する。

 そんな100%シンジ君、いや、ゲンドウなのがハイロックなのだ。


 それを改めてこの作品をみて、思い出させられてしまった。


 結局、不器用な、そして臆病な男の魂を語ったのがこのエヴァンゲリオンだった。


 庵野はいいよな、モヨコという自分の理解者を得たのだ。だから新劇場版なんていう、自分の悩みを解消した解答編を俺たちに示そうとした。でもやっぱりそれは欺瞞だと気づいて、いま、回答に悩んでいるのだ。


 だからやはり、俺はエヴァを許さない。

 サブリミナルに俺にめんどくさい要素を植え付けた。人はどこまで行っても一人だと教え込んだのは、やはりエヴァンゲリオンなのだ。

 同世代の独身は、少なからずエヴァの呪いを受けている。


 でも、まあ、庵野は自分自身で答えは出したし、アニメ版26話で、ゲンドウの真の思いも語っている。


 葛藤はあるものの、アニメ版でも劇場版でも、庵野監督は前に進みだそうとしたに違いない。


 葛藤もあるし、俺自身俺のことを好きではないけれど、そろそろ結婚を申し込もうかと、改めてエヴァ全話をみて思った俺だった。


 結局、今を変えようとすることが生きようとすることであり、拒絶されてもいいから進まなきゃいけないということが、庵野の分かりやすいメッセージなのだろう。

(拒絶が怖いというより、変わるのが怖いのだけれど)


 まさか「逃げちゃだめだ」が俺の恋愛に降りかかってくるとは思いもしなかったよ。

 今回で、最終回の感は満載だけど、残りの話についても言及するよ。

 じゃあの!


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