第105話 機械獣ゲイドラコンドルと機械獣メガネキョウリン
「ナヤーっ! 逃げて、逃げてー!」
「逃げろナヤーっ!」
「早く逃げろーっ!」
リラ、イザック、オスカーがそれぞれ声を張り上げる。だが、キョウリンチョウのスピードは速く、ナヤが何事かと顔をのぞかせたちょうどその時、キョウリンチョウはナヤへ体当たりをかました。大きな機械獣のため、結果としてナヤではなくゲイドラコンドルに体当たりする格好になった。
「ナヤーーーーーーっ!」
イザックが叫びながら走り出す。リラとオスカーもそれを追って行く。
「どうして気付かれたんだ。キョウリンチョウは目が悪いはずだろう」
「たぶん、キョウリンチョウじゃなくて新種だったんだよ。だからナヤを視認できた。考えが甘かったね」
オスカーとリラの視線の遙か先で、ゲイドラコンドルが飛び上がった。二人は慌てて立ち止まる。わき目もふらず走っていたイザックをリラが「待って!」と止まらせた。
ゲイドラコンドルに新種キョウリンチョウが絡みついているのだ。そして、体のあちこちに噛みついている。これは一体何事だ?
リラはすぐ望遠鏡を取り出した。それで捉えたのは、ナヤの姿。小さな白いブロバルモモンガとなり、ゲイドラコンドルの体の上を駆けずりまわっている。下手に滑空して逃げたら、あっという間に捕まってしまうからだ。
「ナヤは大丈夫! ゲイドラコンドルを追わなきゃ!」
リラがそう言うが早いか、イザックはゲイドラコンドルの進行方向へ走り出した。リラとオスカーも、ゲイドラコンドルを見ながらそれに続く。
絡みつく新種キョウリンチョウの体が、ゲイドラコンドルの三本の首のうち二本をねじり切った。バチバチと火花が散る中、ナヤはひたすら二体の機械獣の体を走り回る。
ゲイドラコンドルはナヤではなく新種キョウリンチョウを敵と認識し、残った一つの首で噛みついた。新種キョウリンチョウが体を震わせて振り払おうとするが、鋭いくちばしが体を噛みちぎるほど深く食い込み、外れない。
ナヤが死に物狂いで走り回る中、新種キョウリンチョウの体がゲイドラコンドルの最後の首をねじり切った。二体の機械獣は、絡まったまま森の中に落下していく。
巨大な二体の機械獣が地面に打ち当たる大きな金属音が響き、地面が揺れた。三人は急いでそこへ駆け寄る。そこには、お互いを破壊したゲイドラコンドルと新種キョウリンチョウ、そして、人型に戻ってゼエゼエと息を切らせるナヤの姿があった。
「ナヤ!」
イザックが呼ぶと同時にナヤは走り寄り、胸に飛び込んだ。
「ケガはないか?!」
小刻みにうなずくナヤ。
「はい。……死ぬかと思いました」
ゴゴン! と音を立てて、新種キョウリンチョウの頭が持ち上がった。ナヤへ突撃する。
ナヤの叫び声をかき消すように「下がれ!」とイザック。ナヤの前に飛び出して、マグネットシールドで突撃を防いだ。
ヴォン! というマグネットシールド独特の音と共に、新種キョウリンチョウがぐらつく。
その側頭部の外殻の隙間に、オスカーが剣を突き刺した。配線が断ち切られ、動きが鈍る。リラの撃ったドライバーガンが、喉元のボルトに命中。素早く回転してボルトを抜き取ると同時に、新種キョウリンチョウは崩れ落ちた。ズシン! と地響きが鳴り、静かになる。
「……やった……。やった、やった! やったああああーーっ!」
リラはピョンピョン跳ねて大はしゃぎ。大急ぎでバラした新種キョウリンチョウとゲイドラコンドルに駆け上った。
「このキョウリンチョウ、やっぱり新種だよ。目が照準器みたいになってる。名前は『メガネキョウリン』かな」
イザックとナヤは、その場にへたり込む。
「ふう、ヒヤッとしたな」
「ええ……今度こそ死ぬかと……」
オスカーも一息ついて二人の隣に腰を下ろした。
「ナヤ、計算して走り回ってたのか?」
「まさか。死に物狂いで逃げ回っていただけです」
「あったー!」
リラの言葉に、三人とも顔をそちらへ向けた。リラが引っ張ってきたのは、ゲイドラコンドルから抜き出した『たまご』が連なったユニットだ。ナヤが立ち上がり、リラとハイタッチ。
「作戦成功ですね」
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