第106話 相棒




 再び『ネオドバイ』へと向かうノイルバギー。リラは助手席でデジタルカメラを手にし、メガネキョウリンとゲイドラコンドルの写真を眺めていた。旅が終わった後にNOILの実績として師匠に見せる写真だが、記念としてリラが写りこんでいるものもある。


「何ニヤニヤしてんだよ」

 運転席のイザックが笑う。ニヤニヤしていた自覚がなかったリラは慌てて「えっ」と顔を前に向ける。それをまた笑うイザック。


「お前、そういうとこ本当に変わんないよな。機械獣オタク少女っていうか」

「ちゃんと成長もしてるよ? メイジャーナルカップの頃の私だったら、絶対この旅は続けられなかったと思うしね」


「ああ」とイザック。

「分かってる。俺も、お前はかなり成長したと思うよ。……なあ、俺はどう? お前から見て」

「成長してるかって? してるでしょ。だって、メイジャーナルカップの後私に手紙くれて……」

「その後だよ。アカデミーでのテロ事件とか、ブルービースト本部での騒動とか、で、この旅も入れて……俺、成長してるかな?」


 今度はリラが軽く笑う。

「不安なの?」


「不安っていうかさ……。お前も成長したし、ナヤも、責任感とか勇気がついて色んなことできるようになったし。俺だけ何も……」

「オスカーは?」


「あいつは、ドグウの話する時以外はいつも同じだろ? いつでも、同じだけのことが必ずできる。それがあいつのいい所だからな。……俺もそうだなんてごまかすなよ?」


「分かってるよ。イザックは変わったよ。私は変わらずに成長したけど、あなたはすっかり変わって成長したって感じ」

「どう成長した?」

「うーん」と窓際に頬杖を突くリラ。

「難しいな。……昔は本当に、テキトーに生きてる感じだったでしょ? だけど、少しずつ少しずつ真剣になっていって、今は本気で生きてる感じがする。ナヤの事も、一生懸命愛してるじゃない」

「やめろよ」と笑いながら顔を赤くするイザック。リラは「ほら!」と指さした。

「昔は彼女の話されたって絶対顔赤くなんてしなかったよ。ナヤの事は、本気なんでしょ?」

「そりゃもちろん、本気だよ」

「だから、人生に本気になったってことじゃない? とにかく、昔のあなたを知ってる私からすると、別人だよ」

「本当に?」

「本当だよ。相棒」

 リラは拳でイザックの肩をトンと小突いた。




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