第98話 『ノイルバギー』に乗って出発
機械獣の背中の黒いとげの一部分が砂のように崩れ、爪にまとわりついた。出来上がったのは黒い鋭いドリル。
「あれは……砂鉄を固めてるのか?!」
剣を抜きながらオスカー。「多分ね!」と妙に嬉しそうに言うのはリラ。
「でも、砂鉄を操る機械獣なんて聞いた事ない。あれも新種だよ!! 名前はそうだなー……」
「そんな話後にしろよ!」
イザックはマグネットシールドの出力を最大にし、衝撃波として打ち出した。機械獣に直撃したものの、背中の砂鉄のトゲを吹き飛ばしただけで、右手のドリルは破壊できなかった。
ところが、機械獣は飛び退いて砂の中に潜った。もぞもぞと砂の中で動き回り、あっという間に背中のトゲは元通り。
「正面切って闘うしかなさそうだな」
剣を構えるオスカーは早くも踏み出そうとしている。イザックももう一度マグネットシールドを構える。だがリラがナヤの手を引いて、高速道路を指さした。
「私達は上へ向かおう」
「え、どうしてです?」
「話は上で! イザック、私の合図で機械獣のトゲを吹き飛ばして!」
「分かった!」
オスカーと機械獣が切り結ぶ。砂鉄を固めたドリルはそこまで硬くなく、オスカーが力を込めて剣を振るうとボキリと崩れた。だが一瞬で元通りに。
「俺の剣じゃ止められそうにない!」
「リラに考えがあるらしい。俺達で時間だけでも稼ぐんだ」
リラとナヤは高速道路の上まで登ってきた。
「リラ、どうするんです?」
「さっき、右手のドリルは崩されなかったのに、背中のトゲが無くなっただけで砂に潜ったでしょ? 私達に背中を向けないようにしてるし、きっとあそこが弱点。イザックとオスカーが引きつけてる間に……」
「私と滑空して、気付かれないよう空から背中に回り込むんですね。完璧です!」
リラが高速道路の端に立ち、ナヤがその背中をつかみながら押す。二人は高速道路から砂漠へと滑空していった。ぐんぐん機械獣へと近づく。
「イザック!」
リラの大声でイザックがマグネットシールドの衝撃波を機械獣に喰らわせた。トゲが吹き飛んだ背中には、大きなボルト。これだ!
リラが撃ったドライバーガンは見事命中。一瞬でボルトを回し抜き、機械獣をバラした。
*
リラが『サテツアラシ』と名付けた機械獣からもたくさん部品を拝借。おかげでたった二日の間に、四人を乗せて運ぶキャンピングカーを作ることに成功した。
前方車両はウリュウから部品を抜き出した強力エンジンアーマーを車体に積んだ自動車。後方につなぐ車両は、天井が落ちたトラックのコンテナにウリュウの外殻をかぶせてサテツアラシの部品で強化し、タンクや冷蔵庫を積み込んだもの。
見た目も造りもワイルドで、なかなかかっこいい。リラはご満悦だ。
「名前、私が付けてもいい?」
「もちろん、お前が付けろ」
「ええ。私もそれがいいと思います」
「俺も異存はない」
イザック達三人も手伝ったとは言え、リラが作った車だ。誰も反対するはずはない。
「私達
「よし!」とイザック。
「ドライバーは俺だったな。で、ノイルバギーをどこに走らせたらいいんだ?」
イザックが運転席に。ナヤが助手席に乗った。
「高速道路に沿って東へ。砂漠を抜けた先の森に、ベルタザールが名付けた『扇の滝』と『三本首の崖』があります。そこへ向かいましょう」
リラとオスカーはコンテナに乗り込み、四人を乗せたノイルバギーは、東へと出発した。
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