第96話 高速道路でのキャンプ
何度か同じようにウリュウと遭遇した後、四人を乗せたウリュウボートは砂漠に到着した。
四人の前には、果てしなく続く砂漠と、その上を走る高架の高速道路。そして、巨大な塔のような立体交差がそびえ立っていた。
「ここから、この地下世界中に高速道路が張り巡らされてたんだろ?」
イザックがナヤに聞く。ナヤはすでに高速道路の入口へと歩き出していた。
「そうらしいです。元々は湖の上にも高速道路が走っていたらしいですが、何千年、何万年の時が過ぎるうちに崩落してしまったようですね」
「そう言えば、それらしいコンクリートの柱はいくつか水面上に顔を出してたな」
オスカーもナヤに続く。そしてイザック、最後にリラ。
「避けるの大変だったんだよ? いちいち言わなかったけど」
高速道路の入り口から、高架の高速道路へ。やはり発掘記の記述通り、車で埋め尽くされていた。遙か地平線まで続く高速道路といくつもの立体交差、どうやらその全てが、同じように車で埋め尽くされているらしい。
「オスカー、お願いします」
ナヤがそう言うと、オスカーは適当な車を選び、中の座席に四つ、『身渡り印』を描きこんだ。
「これで、どこに行っても『身渡り』でここに帰って来られます」
四人は荷物を降ろし、大型のトラックを利用してテントを張り始めた。
「戻るって言っても、ここからどこに向かうかはハッキリしてるんでしょ? 迷路じゃないんだし」
リラが縄をトラックに括り付けながらそう言う。ナヤは地面にシートを敷きながら答えた。
「何か危険に遭遇した時、ここに帰って来られるという意味です」
「ここからはどうするんだ?」
テントを張り終わり、シートに座るオスカー。
「ここには様々な古代のアーマー機関を使った道具があります。水をためておくタンクや冷蔵庫、コンロを手に入れて、リラ主導でキャンピングカーを作りましょう」
アーマー機関は、古代人の作り出した準永久機関。何万年も前の物はさすがに動かなくなっているだろうが、リラが調整すれば、また動くようになるはず。それを利用し、本格的な旅の準備をするというわけだ。
*
冷蔵庫、コンロ、タンクを探すのに、まる一日かかってしまったものの、必要な物は全て見つける事ができた。四人で夕飯の焼き魚を食べながら、発掘記を読む。
「ベルタザールは、私達が四人がかりでやったことを一人でやったようですね。その先の旅も、ずっと一人で過ごしたようです」
ナヤは電灯の明かりを頼りに発掘記のページをめくる。寝転がるイザックは「すげえな」とこぼした。
「こんな誰もいない場所を、一人で旅し続けるなんて……。俺だったら気が変になっちまうよ。言葉も忘れちまったりして」
「ベルタザールもそれを恐れていたようですよ。だから毎日本を読み、歌を歌い、発掘記を記したそうです」
「まさに偉人だね」
カチャカチャと冷蔵庫の部品をいじりながらリラ。
「それを試みただけじゃなくて、黄金の獅子を見つけて、生きて地上に帰ってきたわけでしょう? 確かにすごい」
「そんな人間が狩れなかった黄金の獅子を狩らなきゃならないんだな」
オスカーがそう言うと、ナヤは首を横に振った。
「彼は機械獣ハンターではありません。ただの実業家なんです。レアメタルの鉱脈を探して世界中旅をし、その間にここに訪れ、黄金の獅子を目撃した、という所までしか、発掘記には書かれていません」
「えっ?」とイザック。
「狩り方とかは全く書いてないのか?」
「ええ」と言いながらナヤは少々渋い顔。
「イザック、あなたは二週間の間にこの本を読んだはずでしょう?」
「悪い。飛ばし読みで途中までしか読んでなかった。本読むの嫌いなんだよ」
「あなた昔からそうだよね」とリラ。オスカーも「ははは」と軽く笑う。
暫く談笑し、リラの機械いじりがキリのいい所まで終わると、四人は眠りについた。
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