第88話 『NOIL』結成




 騒動が終わってから、師匠に一人だけ呼ばれたリラ。部屋を出ると、すぐそこに師匠がいた。


「リラ、さっきはすまなかった」

「いや、私じゃなくて、オスカーに……」


「いずれ謝罪はするつもりだが、今私が行っても火に油を注ぐだけだろう。それに、オスカーだけではなくナヤもだ。彼女のプライドを傷付けてしまった」

「……取りあえず、伝えておきます」


「あの二人に必要なのは、『信用に足る実績』だ。それがあれば、オスカーがドグウの後見人になって解放することも、ナヤが連合国政府に要請してアルカズ・ローリーの娘を探す事もできる」


 そう言うと師匠は、ポケットから金属製の小箱を取り出した。大きくひしゃげ、蓋が閉まらなくなっている。それをリラに手渡した。

「これは何ですか?」


「黄金の獅子の生きた部品が入っていた小箱だ。旧ブルービーストは、これを使って獅子の亡霊を呼び寄せていたらしい。だが、部品は獅子の亡霊に回収され、黄金の獅子本体へと戻って行った。聞くところによると、どうやらその部品は旧ブルービーストが自分達で黄金の獅子から奪い取ったものらしいぞ」

「え?!」と目を見開くリラ。

「じゃあ、ブルービーストのメンバーは、黄金の獅子の居所を知っているんですか?!」


「ああ。詳しい話は、アッタ・ヴァルパに聞け。お前達が行くと伝えておく」

 師匠の手が、リラの肩に乗った。

「黄金の獅子を探しに行くんだ」




 *




 リラが部屋に戻ると、オスカーが泣いていた。不甲斐なさを感じているのだろうが、相手が師匠ではこうなるのは必然だ。慰めるイザックとナヤに、リラも加わった。


「オスカー、きっと師匠も不本意ではあったんだよ。謝ってたよ。『火に油を注ぐ』って言って、時間を置いてから謝りに来るって」


 オスカーは大きく息をしながら手の平で涙を拭う。

「どうしてあいつが逮捕されるんだ。何も悪いことはしてない。俺は、あいつのそばにいてやらなきゃいけないのに……」


 ナヤが横からオスカーの肩に手を置く。

「それだけが責任の果たし方じゃありませんよ。あなたの気持ちは間違いなくドグウにも伝わってます。あなたに出来る事……私達も一緒に考えますよ。そうでしょう?」

 ナヤはイザックとリラにそう問いかけた。イザックはうなずき、リラは「もちろん!」と力強く言って、オスカーの前へ一歩近づいた。


「機械獣ハンターとして大きな実績を上げれば、後見人になってドグウを解放できるって師匠が言ってたの。で、これを見て」


 三人の前に、ひしゃげた小箱を取り出してみせた。


「黄金の獅子の手がかり。アッタ・ヴァルパが詳しい事を知ってるって」


「まさか、黄金の獅子を狩るってことか?」

 眉をひそめるイザック。

「俺達にそんな事できっこ……」

 リラはあえてイザックではなく、ナヤに話しかけた。

「ナヤ、師匠はあなたにも謝ってた。プライドを傷付けたって。黄金の獅子を狩って実績を作れば、連合国政府がアルカズ・ローリーの娘を探してくれるみたい」


 すうっと空気を吸い、うなずくナヤ。

「やりましょう。どこまでできるか分かりませんけど、四人で挑戦してみましょう」


 イザックも、ナヤの様子を見て「分かった」と立ち上がった。

「やるか!」

 すでに立ち上がっていたオスカーをナヤが引き寄せ、四人で円陣を組んだ。中央にそれぞれの手を出す。一番初めに言葉を発したのは、リラ。顔はナヤに向けている。


「ねえナヤ、私はあなたにリーダーになってほしい。私じゃ無理だったから。他の二人は?」

 イザックとオスカーは迷いなく答えた。

「もちろんオッケーだ!」

「何も異存はない」


 自分以外の三人の顔を眺めて決心を決めたナヤ。大きな声で言った。


「ナヤ、オスカー、イザック、リラ。合わせて有志ハンター隊NOILノイル! 力を合わせて黄金の獅子を狩りに行きましょう!」


 おう! と部屋に四人の声が一体となって響いた。




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