第82話 侵入者
アストロラ上空を飛ぶディエンビの艦内で二人の獣人がひそひそ話をしていた。
「おい、結局ディエンビにはどれくらいのメンバーが乗ったんだ?」
「全体の三分の一くらいか……? 乗り込む直前にもかなり離脱者が出たからな」
現在、ブルービーストの巨大飛行戦艦『ディエンビ』はアストロラ首都に向けて進んでいる。本来なら獣人のメンバー全員とアルファ機械獣がすし詰めに乗るはずだったが、機械獣は一機もおらず、乗り込んだメンバーも予定の三分の一。多くのメンバーは、不安に駆られていた。
「連合国のスパイもアストロラに来てるらしいじゃねえかよ」
「このディエンビは、蛇と薔薇曰く『これだけで世界征服できる代物』なんだとよ。だから連合国が介入しようがなんだろうが心配はない。……って事らしいが……」
「だけど、この人数でスペックが活かしきれるのか?」
「俺には分からねえよ。詳しい奴探して聞くか……」
ジリリリリ! と警報が鳴り、二人とも肩を震わせて黙った。
コックピットで警報音を聴いたブルービースト総統ガル・ババ。誰にも何も聞かずに報告を待つ。副艦長がガル・ババへ振り返って叫んだ。
「艦体後方部、二十二番ハッチが外から開かれたようです! 何者かが侵入した可能性が……」
何人かのメンバーが、すぐにそこへ向かおうと走り出す。ところが、それをガル・ババが大声で止めた。
「待て! 恐らく連合国のスパイだ。私が行こう」
*
ディエンビ後部、二十二番ハッチのある部屋とは、機械獣を乗せるはずだった大きな部屋だ。その扉の前に立ったのは、総統ガル・ババと部下二人。
「私が開けます」
そう言って扉に手をかけようとした部下をガル・ババは止めた。
「いや、私が開ける。お前達は下がっていろ」
ガル・ババは部下を押しのけると、自分で扉を開いた。
天井にあるハッチが開き、青空が覗いている。だが、誰も見当たらない。
「この部屋に扉はこれだけか?」
「いえ、奥にもう一つあります」
「この部屋を探したら奥に進むぞ」
そう言ってガル・ババが部屋に入る。部下もそれに続いて歩き出したが、突然、何かに吹き飛ばされた。
扉はガル・ババだけを部屋に入れて閉じ、ガチャリと音を立てて鍵が締まった。
「ガル・ババ!!」
ガル・ババの名を叫び、部屋の奥から現れたのはナヤ。後ろにはリラとイザックの姿も。
「あなたに聞きたいことがあります!」
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