第75話 王室直属ハンターVS連合国スパイ




 ブベル塔下層の大広間で、『銃をこっちへ!』と手で合図するシンシアさん。オスカーは、銃をシンシアさんが隠れる柱の方へと放った。ところが、すぐに銃声が響き、柱に届く前に銃は床へと撃ち落とされた。アイヴリンの声が響く。


「私の銃の腕前を甘く見ないでよ。空中を飛ぶ的でも一発で撃ち落とせるから」


 アイヴリンの声が聴こえる中、シンシアさんはポケットからコンパクトを取り出し、ハンカチで包んだ。そして、柱の陰から宙へ放る。

 それに反応したアイヴリンの銃声が響く瞬間にシンシアさんは側転するように飛び出した。

 届いた左手で、銃を持ち上げることなく引き金を引き、銃弾がアイヴリンの銃を弾き飛ばした。

 シンシアさんは右手を地面につけながら二発目。アイヴリンの奥の窓ガラスを割る。足を床に着地させながら三発目。空中のアイヴリンの銃を再び弾いた。

 そして、銃を持ち上げながら放った四発目でもう一度アイヴリンの銃を撃ち、窓から外へ放り出した。

 シンシアさんが立ち上がって銃を両手で構える時には、全て終わっていた。


 アイヴリンは両手をゆっくり上げ、膝をつく。オスカーが駆け寄って縄で腕を縛り上げた。




 *




 王家の紋章が刻まれた金属板がいくつも飛び交い、ヤーニンに突撃する。だが、その全てがヌンチャクに弾かれていた。

「チッ!」

 業を煮やしたルースリーが自ら突っ込む。ナイフをヤーニンに向けて突き立てるが、やはりヌンチャクに弾かれた。


 ルースリーは自分が乗った金属板から、別の金属板へジャンプ。次々と乗り変えながら、目にもとまらぬ速さで飛び回り、手にしたナイフで竜巻のような勢いで切り付ける。

「八つ裂きになるのも時間の問題だよ!」

 ルースリーがそう言った拍子、動きを見きったヤーニンがルースリーが乗ろうとしていた金属板にヌンチャクを打ち当てて回転させた。

「わぁっ!」

 ルースリーはバランスを崩してヤーニンの目の前に倒れ込み、ヌンチャクで顔を打ち付けられて気絶した。




 *




 ジョイスに飛びかかったリューマ。右の拳を容赦なく打ち込む。ところが、ジョイスはその拳をあっさりとつかむと、凄まじい握力で握りつぶした。ミシミシと音が鳴り、爪がリューマの拳に食い込む。

「ぐっ……ぐあっ!」

 やっとの思いでふりほどいたリューマの腹に、ジョイスのお返しのパンチ。ドン! と大きな衝撃音が鳴り、リューマは壁を突き破って部屋を突き抜け、倒れた。

 一撃で吹き飛ばされた王室直属ハンターの隊長を鼻で笑うジョイス。

「歯ごたえないけど、まあイゲルマイトよりはだいぶマシだったかな」




 *




 ジョイス、シンシアさん、ヤーニンの三人の助力により、上層部まであと少しという所まで登ってきたリラとイザックとナヤ、そしてコエン。

 その前には、王室直属ハンターであり、メイジャーナルカップでリラをもてあそんだ男、ライランドが立ちはだかっていた。


「他の三人は手こずってるのか? まあ、相手が相手だし仕方ないか……」

 そう言ってライランドは大きなドライバーの先端を放った。それが磁気の霊術でふわりと浮く。


 コエンがリラ達の前に出た。ところが、それを後ろから止めたのはイザック。

「ちょっと待った。あんたがいないと道が分かんねえよ。ここは俺が引き受ける」

 そう言ってコエンを下がらせたイザック。しかし、それをさらにリラが止めた。

「あなたはナヤと一緒にいてあげて! ライランドの相手は私がする。……メイジャーナルでの借りも返したいしね」

「……分かった。でも気を付けろよ」

 後ろへ下がったイザックの隣でナヤも言った。

「いざとなったら逃げてください」


 リラは笑顔でグーサインを返した。

「分かってる。何としてもガル・ババに会ってよ!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る