第76話 リラVSライランド




 ナヤ達三人を逃がし、リラはライランドと向かい合う。足に力を入れ、ドライバーガンをいつでも撃てるよう構える。

「ライランド……私、あなたに遊ばれたことは忘れてないよ」

 リラがそう言うと、ライランドは苦笑い。だが、申し訳ないというより、何を言ってるんだと馬鹿にするような雰囲気だ。

「いつまでもそんなことネチネチ気にするなよ」


「謝るつもりはないわけ?」

「おい。お前、本気で俺とやり合うつもりなのか? 悪いが俺は手加減しないぞ」

 誰だよレイナって。こいつ、謝るどころか名前も覚えてない。


「お前は、連合国の凄腕スパイでも何でもない。田舎で機械獣ハンターやってる夢見がちなガキだ。身の程はわきまえた方がいいぞ」

「馬鹿にするのもいい加減にしてよ!」


 リラが怒鳴ると、ライランドがドライバーを飛ばしてきた。それを何とかいなし、ライランドの顔に向けてドライバーガンを撃った。それと同時にリラは走り出す。

 恐らくライランドは、リラが撃ったドライバーガンの先端を、自分が飛ばすドライバーで弾くはずだ。その瞬間を狙って、あのきざったらしい嫌味な顔を思いっきり殴りつけてやる。


 リラの思惑通り、ドライバーガンの先端は、ライランドのドライバーに弾かれた。そこに現れたライランドの顔。恐怖と驚きの表情だ。拳でその顔、ひしゃげさせてやる!

「この……!」


 ところが、拳が当たる直前、リラの脇腹に衝撃と激痛が走り、体が真横に吹き飛ばされた。リラは転がってのたうち回る。

「あ……ぐうっ……ううぅ……!」


「あははは」

 ライランドの笑い声。

「悪いな。ドライバーはあったんだよ。お前の作戦なんか全部お見通しだ」

 隠されていたドライバーに脇腹を打たれたのだ。立ち上がれないリラに膝でのしかかり、頭を押さえつけるライランド。


「これがだ。俺達は、何としても王家の誇りを守らなきゃならない。そのためには何でもする。メイジャーナルで、焼きもち妬いたアイヴリンにも言われただろ?」



『人は何かを守るために……



 突如として、大きな衝撃音と共に窓と壁が粉々に吹き飛んだ。そしてバシャバシャと水音。頭を押さえつけられているリラにはよく見えないが、潮の香りがする。これは海水だ。

 ブベル塔のこんな高さに海水を持ってこられるのは、恐らくあの人だけ。リラは顔を動かせないまま呼んだ。


「師匠!」


「リラ、ケガはないか!」

 やはり師匠の声。だが……現在進行形で敵に押さえつけられているリラに『ケガはないか』とは……おかしいとも言えないがどうも……

「それは……助けてから聞いてください」

「……まあ、そうだな」


 ライランドが「あれ?」とつぶやいた。

「そっか! お前レイナじゃなくてリラか!」


「そうだよ! 私はリラ・ベルワール。で、その人は私の師匠。闘うつもりなら覚悟した方がいいよライランド! あなたなんかが敵う相手じゃないから!」

「フッ」と師匠が笑うのが聴こえた。




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