第58話 ナヤの正体
モモンガに背中をつかまれ、木をよけながら空を滑空したリラとライト。そのモモンガは、姿を変えてナヤになった。
リラとライトは驚きで言葉が出ない。そしてナヤの方も、何を言ったらいいか迷っているようで伏し目がちだ。
ゴウッと風が三人を撫でると同時に、大きな影が通り過ぎた。リラが空を見上げるとそこには、扇形の四枚の翼と長い尾羽を持った大型の飛行機械獣『キョウリンチョウ』の姿。ポクル宮の方へ飛んでいく。
さらにもう一度風と影。今度は三つの頭を持った大型飛行機械獣『ゲイドラコンドル』が三人の上空を飛んでいく。さらに、その後に続いて行くのは、様々な鳥達。恐らくブルービーストの獣人だ。
「しばらく隠れましょう」
ナヤがリラとライトを木の陰の方へと押し、移動させた。
*
ポクル宮の中庭に、キョウリンチョウとゲイドラコンドル、そしてブルービースト空組の獣人達が降り立った。水組のメンバー達もポクル宮から出てくる。先頭を歩くレブの元に、アッタがやってきた。
「レブ、成果はどうだ」
「研究所から来てた研究員は全員捕まえたよ。でも新型チェッカーは見つからなかった。多分、爆発でふさがれた区画にある」
「意地でも渡さないつもりというわけか。だが、あいつらもまさか研究員を盗むとは思っていなかったんだろうな」
アッタの横を縄で縛られた研究員達が歩かされていく。行先は、キョウリンチョウとゲイドラコンドルが持ってきたコンテナだ。
「だろうね。こいつらを本部に連れて行けば、新型チェッカーを好きなだけ作れるんだろ?」
「そういうことだ。よし、こいつらをコンテナに積み次第、出発だ。レブ、お前達水組も乗っていいぞ」
*
膝を抱えて座るナヤ。リラは恐る恐る声をかけた。
「ナヤ……獣人だったの?」
「……はい。『ブロバルモモンガ』の獣人です。自分の体重よりずっと重い物をたくさん持って滑空することができます。耳がいいのも特徴です」
「ローリー家って……獣人だったんだね」
リラがそう言うと、ナヤは苦笑いでこぼすように言った。
「そんなわけないでしょう? ローリー一族は人間です。私は血がつながっていないんです。今まで、知っていたのは世話係のユーバートだけでした」
リラはチラリとライトを見た。どうやら混乱しているらしく、呆然とナヤを見るばかりで言葉を失っている。
ナヤへ視線を戻し、リラは聞いた。
「どういうことか、詳しく聞いたら……だめ?」
ナヤはゆっくり息を吸って吐き「もう仕方ありませんね」と話し始めた。
「私はブルービーストの総統ガル・ババが、自分の部下にはらませた子供です。生まれてすぐ、ローリー家の本当の第一子とすり替えられました。その後ブルービーストは、世話係としてブルービーストのメンバーであるユーバートを送り込み、ばれない様にさせていました」
「そんな……何のためにそんなことを?」
「ガル・ババは、獣人である私がローリー家の家督を継げば、ローリー財閥を丸ごと自分の物にできるなどと考えていたんですよ。愚かにもほどがあります。私はずっとお父様とお母様に育てられてきたのに、血の繋がりだけで自分の言いなりにはるはずだなんて。……私は小さい頃にユーバートからそれを教えられました。彼は、立場上ブルービーストからの命令には逆らえませんが、本当に私の事を守ってくれていたんです。でも……そんな板挟みの生活も、もう終わるでしょうね」
ナヤはライトの手を取った。
「ライト、黙っていてごめんなさい。この事は、私の口からお父様とお母様にお伝えします。それまでは、黙っていてください」
ゴウッと風の音が聴こえてきた。ポクル宮からキョウリンチョウとゲイドラコンドルが飛び去って行く。その周りにはもちろんブルービーストの獣人達の姿も。
ナヤが立ち上がった。
「行ったみたいですね。警察と軍隊の車両が走る音も聴こえてきます。もう戻って大丈夫でしょう」
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