第10話 機械獣解体戦




 メイジャーナルカップ二日目。最初の競技『機械獣解体戦』。用意された機械獣を全てバラすまでの時間を競う競技だ。

 生きた機械獣ではなく、一旦バラしてから組み立て直したものを用いるため、体力よりもそれぞれの機械獣の仕組みに関する知識と自身のアーマーさばきが勝利のカギとなる。

 コロッセウムの床が取り外され、下にある小部屋があらわになっている。それぞれの小部屋には競技用に用意された機械獣。リラは目の前の機械獣を見つめていた。


 シルドフロッグ。これは何度もバラしたことがある。お手の物だ。

 ウツボペリカン。これは狩ったこともバラしたこともない。

 そして、ケラベアーだ。リラの考察は当たっているだろうか。


 観客席からの歓声の中、コロッセウム中に実況が鳴り響く。

「ついにメイジャーナルカップ最初の競技が始まります! ハンター達の前に置かれた三体の機械獣。はたして一番はじめにバラしきるハンターは誰か! それでは……スタート!」


 ドン! と空砲が鳴り響くと同時に、リラはシルドフロッグの下あごにドライバーガンの先端を差し込み、一瞬でボルトと留め金を外した。ガチャガチャとシルドフロッグの外殻が外れ、手足が外れる。

 続けて手足の関節を一つ一つ外すと、審判が「よし!」と判定。次の機械獣に移る。


 次はケラベアーだ。リラがあの背中のボルトを外すと、ゴン! とケラベアーの大きな両手が落ちた。それと同時に上半身と下半身の繋がりも緩くなった。

 それをドライバーガンを使って完全に外し、続けて両足の付け根の留め金を引き抜いて、関節までバラしたところで、「よし!」と審判が判定。


 最後にウツボペリカン。これは全くの未経験。図鑑で読んだ情報を頼りに、まずは首の付け根のボルトを外す。首だけがカチンと外れたが、それ以外は変化なし。

 胸にある留め具を引き抜いて、二つの大きなボルトのうち、上を外した。同時に胴体が揺れ、全体が緩む。ドライバーガンで外殻を引き剥がそうとするが、どうやら緩くなっただけでまだ固定されている。

 諦めてもう一つのボルトを外す。すると、まるで弾けるようにウツボペリカンの胴体がバラバラになた。

 大きなバケツのような顎をドライバーガンで外したところで、審判が「よし!」と判定。傍らの大きなタイマーが止まった。



 競技が終了し、コロッセウムの床が閉じられた。ハンター達はその上に集まる。リラはイザックを見つけて駆け寄った。


「イザック、タイムどうだった?」

「十二分五秒ゼロ九。お前は」

「七分二秒四四!」

「ハハハ。俺の一位もう消えたじゃん」

「私も一位は厳しいかな。ウツボペリカンに手間取ったから」

「マジか……くっそ」

「でも、明日は……」

 リラが話し始めると、突然イザックは明後日の方を向き、手を振りながら大声を上げた。


「リンナさーん!!」

 リラが止める間もなく、見つけたバルトとリンナの方へ走っていくイザック。昨日の夜はあんなにやる気を熱く話していたのに、競技が終わるとこれだ。

 だが、それもイザックらしい。怒りより、苦笑いがこぼれた。



 観客席の上に設置してあるモニターに、選手たちの名前と記録、順位が映し出された。それを見たリラに衝撃が走る。


 イザックは二十五位。リラは十二位。そして、それよりだいぶ上、五位に、ナヤ・ローリーの名前があったのだ。


 リラは集まったハンター達の中に彼女の姿を探した。アカデミーの制服を着た集団の中に、興奮する他の生徒たちから肩を揺さぶられているナヤの姿があった。

 ナヤはこちらに気付いており、笑顔で手を振ってきた。リラも笑顔を作って振り返す。


 リラにとって、プライドをえぐられる衝撃的な出来事だった。




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