五章 勇者、久しぶりに竜殺しに挑む(6/6)


   ○


 白の世界に、黒のかたまりかいをまき散らす。


 黒のりゆうをまとい、こぶしつめなれ足はきばなれとばかりくるう少年。


「チ────!」


 しかし。白の世界の主であるはくりゆうが、黒点をつぶさんと送り出すひようそうの雨との冷気。それらは少年をじよじよさいなみつつある。


「『れつそう』──!」


 氷のやりたまつぶても、大気・りよくすら。全てをつらぬいて、ダイスのこぶしからひらめきが走った。


「カ、ア!」


 りよくしようげきが向かうその先には、コキュトー。とつじよ宙へと出現した厚さ一メルをえるひようへきが五枚、くだけ去りながら主を守った。


「……フン。多少、やるようになった」深い息をす。


貴方あなたさまの御力が落ちておられるのです。……むしろ人間に転生し三年でこれならば、きようたんあたいするものですが」


 実際のところ。だダイスはコキュトーに有効打といえるものはあたえられていない。反面、四方八方から降りかかる氷のは着実にかれへダメージを重ねている。


(ブレスなりおおわざが来ればはんげきのしようもあるが、こうもしんちようではな)


 コキュトーは無手であるダイスに対し、てつていてききよを取り、氷雪結界から生ずる全方位こうげきてつしている。このじようきようでは、ダイスのいかなるこうげきもコキュトーのぼうぎよが間に合ってしまう。


「──まあ、そろそろか」


 つぶやきに、コキュトーが声にあんにじませた。


「……おお。御気は済まれましたか。なに、こくで御力をたくわえられれば、ほどなくべるに相応ふさわしい力となられましょう」


「ああいや、ちがちがう」ぱたぱたと立てたてのひらるダイス。


「は…………?」


「コキュトー。貴様の力は見事。時の力をみ、今や他のじゆうしんにもおとるまいよ」


「え、は、光栄の至り……で」


 ダイスの視線は、数メル横にきつりつする氷柱、その中へと向く。


「しかし、貴様も運がない。よりにもよって時間氷結とはな」柱をる。「何をしているぼねが。さっさとだつせ」


「何を……何を言っておられるのです、王よ」


 返答は、ひびの入る音だった。りゆうがんきようがくに見開かれる。


鹿な! 時間がまっているのだ! かいなど……!」


あいにくだが、そこの骨は生前三界をわたっている。時のかんしようにも逆らおうさ」


「そ、それは一体どういう」


「あぁ──知らんで戦っていたか。この骨、生前の名をアルヴィス・アルバースと言う」


「な…………!?」


 きゆうてきの名へのきようがくに同調するように、氷柱へ刻まれるひび。連続した音が止まる。そして。


「どりゃっせい!」


 停止していたこつけんの一り。そのまま続きをるように、さい音と共にどくが解き放たれる。


「なん……だと……」はくりゆうせんりつが白銀の中に消える。


「あーつめってぇ! くそ、やってくれやがったな。だつしゆつに手間取った」


 ぱんぱんと、くろよろいしもをはたき落とすアル。ダイスの視線に気付き、がんこうを向けた。


ちゆうから聞いてたが。三つどもえでやるんならまとめて相手してやるぞこのろう


「たわけが」くつくつと、こくりゆうたましい宿す少年がわらう。「わがはいも今は人の身だ。その骨手、しばし貸せ」


「何を……言って、おられる」


 半ばぼうぜんとした声が、りゆうからひびく。


「人に産まれ、人にいつくしまれたならばごく当然であろうが。まあ、国など知ったことではないが、肉親はな。せいぜいまもらねばなるまい。ゆいごんでもあるのでな」


 は、と。アルが少年の後姿を見た。


「──あぁ、おろかな親だった。常の赤子であれば、わかるわけもあるまいに」


鹿な……鹿な……! よりによって勇者と!」


「いや、コレと再戦はやぶさかでは無いがな。今生の姉に禁じられてはな」


「──ああ」笑いに近い声が、白骨から出た。「一応言うこと聞いてんだな、家族の」


やくじようたがえると一晩中泣く。かなわん」心底うんざりしたような顔で、ダイス。


「……私にどうせよとおおせになる。貴方あなたさまを失ったりゆうぐんはもはや軍の体を成しませぬ。我々には王が必要なのです」


「ハ。まだような事を。りゆうほこりあるならば、みずからがおう軍をべる程度はほざけ。……ふん、そうだな、りゆうの上に立つならばそれくらいのがいしいものだ」


 うむうむと、ダイスは何度もうなずく。


 それに、コキュトーはだまんだ。アルはりかかるすきさぐるが、じよじよにコキュトーの周囲へひようじんの結界がかび始めた。


「──よろしい。ならばこの私の意志の元! 貴方あなたさまを連れ帰り、従っていただく! 自由は無いものと思っていただこう! 貴方あなたさまの人としての生など、存在をしばる者もろとも、ここにこおかせる!」


 はくりゆうえる。時のていたいを指向した氷雪の勢いが増していく。絶対れいせまる極低温が一体をおおった。この半径五百メルの空間では、物質はそくに動きを止める。上級ほう以上のりよくめた魔力駆動マナドライブが持続出来なければ、身動き一つ不可能だ。


 ──ゆえに。この戦場はりゆうと、勇者のむくろと、りゆうこん持つ人だけのものだ。


「その意気や良し」ダイスが満足げにくちを上げた。


「やる気出させてどーすんだ鹿!」アルがツッコみつつ「……てかお前寒くないのソレ」


「これはりよくで編んだ服だ。貴様のその不格好なよろいと似たようなものよ」


「うわ、じゃあお前実質ぜんなの。キモ。しゆつきよう


「骨まで出している貴様が言えることか」


 言い合いながら、一人と一体の転生者ははくりゆうと、そこまでの宙に生える氷のえる。アルのけん──スカットゥルンドが白くひかかがやき、空間に満ちたりよくを吸い始めた。


「そのけん……!」


 コキュトーがうらみ心頭の声を発した。何せ、ディスパテを初めとしてせいりゆうの血をいく体も吸ったものだ。


「うおおめっちゃ手が熱い! こうなると思った!」アルが悲鳴を上げながらけんりよくを使い、二メルをえるこくびやくたいじんを形成する。


めるな……次は氷けなどで済むと思うか! 勇者のむくろが、粉じんくだいてくれる!」


「やってみるか」


「! ──チッ!」あわててダイスが飛びすさる。


 放たれるのは、せいけん『円』。長大化した神聖けんによるざんげき結界が、あつとうてきはんはらう。そのまま、とつしんけんせんが空間のりよくをさらにらう。


 出来上がるのは、結界のエアポケットだ。周囲の氷雪がせる前のいつしゆん、アルはとがめ無く行動を起こせる。いつしゆんめを行える。


「射程内だぞデカ物……! どうけんおくでんカン』! 前方投射バージョン!!」


 ごう、とりゆうの構えよりくアル。大理石模様のりよくこうの束が、百メル以上のきよらいそくいてコキュトーへとはしる。


めるなと言ったァ!」


 激音が連続した。光をはさむように連続して地から生えた、二十メルを軽くえるだいひようそう。そしてめを行ったのはアルだけではない。コキュトーのアイスブレスがむかつ。


   ○


 そのげきしんは王都にすら届いた。くだけたこくびやくこうは結界のドーム外にその姿を現し、飛散した氷へんがミクトラのあしもとった。そのまま、周囲数十セルの地面をこおかせる。


「氷柱が消えたかと思えば……! あ、あの内部はどうなっているのだ……」


ちがっても骨ろうを助けに行こうとか考えるなよ。おれにしたところで、入ったしゆんかんに死ぬぞ、あんなごく。……あのバケモノもうじやに似合いの戦場だ」


 せんりつふくませながら、くろはちはや吹雪ふぶきと化した結界は、内部を欠片かけらうかがえない。


 ミクトラは小さく、心がくじける感覚を覚えた。ひようとはいえ、りゆういちげきうことが出来た。しかし、すぐそこで行われているはずの戦いが余りに遠い。かのじよの指一本すら、あのむくろと化してなお戦う勇者の背をせない。


(アル……! 私は、貴方あなたからまだ学びたいことが山のようにある。ハルベルとてそうだ。どうか、無事で……)


 いのるように、ミクトラは次のワイバーンへとけんを向ける。いのりしか送れぬ自分へはいかりを向けながら。


   ○


カンですら届かねえか……!」


 ばくだいひようじんの向こうに立つのは、無傷のコキュトー。


 先のいちげきは、常のアルならば行動不能を心配する必要があるおおわざだ。


すいのぶんと、けんが吸収したりよくを使った今でも、おおわざは後一発ってとこか)


 じようきようは五分。しかしこのいつしゆんで、もぐかげがある。


「ようやくすきを見せたな」


「────!」


 へんですらもうじゆうを殺し得るかいの拡散をくぐけ、ダイスがはくりゆうあしもとささやいた。


「『れつ』」


 げきりん──りゆうのどもとの急所──け、黒いざんげきめいたりがひらめいた。


「ゴォ、ゥゥゥア!」きよりゆうさけびが風を圧する。


「チ、防いだか」


 コキュトーが反射的に上げたうでが半ばけ、りゆうけつほとばしる。ばんのう薬、もしくは究極の材として知られるが、主が生きている以上、飲めばこおるだけだ。


「く、グ……!」


「でかしたガキんちょ!」「たわけ! さっさとめろ!」


 コキュトーがきばみするところへ、すでにアルがはしんでいる。


 アルたちとコキュトーをへだてていたきよが、ついに消えた。黒が白へとさつとうする。


 アルもダイスも、単独で戦っていた時にはおおわざじようきようをこじ開けることはしなかった。後が続かず、再びコキュトーのぼうぎよが整ってしまうのが分かっていたからだ。


 だが。一人と一体であれば。


「おの、れ…………!」


 コキュトーの体がひようをまとい始める。はなせぬと見て、接近戦のかくを決めた。


 よろいめいたぎようと化したりゆうが、そのきよだいつめ尻尾しつぽを乱れ飛ばす。しかし、


「左つめ、受けろ!」「尻尾しつぽ止めろよチビ!」


 金属音とさい音が連続する。骨と少年は──健在!


受けられる!?)がいそうしたコキュトーの心にきようがくかぶ。(一人ずつ戦ったかんしよくでは、秘していた力を計算に入れても防ぎ切れぬはず……!)


 はんげきが飛ぶ。時間ごとこうげきこおかせるひようり飛ばされ、くだかれる。


つらぬかれる……!?)


 りよくの流れに図けてさとい者──たとえば、この場にだいどうフブル・タワワトがいたならば。アルとダイス、二者の間に黒いりよくの二重せんが行き来していることに気付いただろう。


「っ……、あー気持ち悪! 気持ち悪!」


「文句があるなら今すぐそのきばがしてやるぞこつ!」


 ディスパテのりゆう、そしてそのたましい。その間でりよくが激しくい、相乗効果が起こっている。ダイスのいちげきにも、時間の流れをつ力が備わっている。


 三者のかいこうさくする。いちげきで上位のものが粉じんになるかいが、無数にまれる。


 つめこぶし。足。けん尻尾しつぽひようそうけんりよくざんこぶしこぶし。足。つめきばひざけん尻尾しつぽつめひじひようじんりよくざんこぶしこぶしひようへきけりつめきばひざ。頭。けん尻尾しつぽけんひようじんりよくざんこぶしつめ。足。つめきば。冷気。ひざけん尻尾しつぽつめこぶしけりひざけん尻尾しつぽつめひじひようじんりよくざんこぶしつめきばひざ。頭。けん尻尾しつぽけんひようじんりよくざんこぶしつめ。足。つめきば。冷気。ひざけん尻尾しつぽ


 ──そしてせんきようが、じんりゆうがいの側にかたむいていく。


 こぶし。足。けんひじけり尻尾しつぽけんりよくだんこぶしけんけりつめこぶしひざけんひじ。頭。こぶしけんけりきばひざけんりよくざんこぶしこぶしけりきばひざけんけんつめひじひようじんけんこぶしこぶしひようへきけりこぶしきばひざ。頭。けん尻尾しつぽけんりよくだんこぶしけんけりつめこぶしひざけんひじ。頭。こぶしけんけりきばひざけんけんつめひじひようじんけんこぶしこぶしひようへきけりこぶしけんひじけりけんけんけんけりこぶし


(は──速すぎ……る……!)


「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」


 はや、コキュトーは防戦一方になる。氷はくだけ、りゆうほうは発動する前に神聖けんりよくごとられる。まれる。かれる。たれる。かれる。


 そして、こぶしけんげきりんにまで届かんとした、その時。


「ウ────ギィガバァァァァアアアアッ!!」


「ッ」「ぐ……!?」


 たつまきれた。氷の地面がばくはつする。防戦の中、集中していやしたコキュトーのつばさがついに回復したのだ。きよりゆうそくに、垂直に飛び立った。


げた!?」


「否! りゆうの気位はそれを認めん!」


 アルとダイスが上空、大穴の開いた結界から空をにらむ。主を失った結界が、わずかずつだがほころんでいく。


 コキュトーはのぼる。空へ。空へ。りゆうきようじんたいは気圧差などものともしない。空へ。雲をける。空へ。しずみかける太陽を水平に見る。空へ。空へ。


「…………アルヴィス。結界を全てそのけんに食わせろ」


 ダイスが重々しく言う。その口角は上がっている。


「何する気だ、あいつは」


「問題だ。尻尾しつぽふくめれば五十メルに達し、百トラム(一トラム=約一トン)をえんとする物質がちよう高空からちれば、地上はどうなる」


 アルが想像したのは、最上級だいしきほうに位置する『隕石招来メテオサクシヨン』だ。サイズにもよるが、基本、町がほろぶ。


「あー、そういう……。くそ、おうに似たようなことやられたが、スケールがちがうな」


 無論ほうで呼ぶいんせきより、せいりゆうの体はさらにきよだいだ。王都まで軽くさらになる。しかも、


りゆうに単純なしようげきかん。無論この規模であれば大地のりよくによる反発がある上、かなり傷つけた故無事では済まんだろうが、生き残る公算は高い」


めいわくやつ……いづづづづ! これだからりゆうってのは!」


 アルががしゃがしゃと走り回りながら、結界のりよくを次々とけんんでいく。くろよろいしにも、右しゆこんこつにはげが出来ている。


「そこで、折れぬ曲がらぬ、いまいましいそのけんだ。つらぬいてこい。こちらも準備は出来た」


「無茶苦茶言うなーお前……なに、そのヤバそうな手」


 もどってきたアルの半分あきれ気味の文句も、ダイスは意にかいさない。その右手首から先が、数メルはあるしつこくりゆうそうと化していた。


「『黒竜真よるさきのつめ』──。ま、前世にはかなわんが、せまる程度は出来ようさ」


 そう言うかれの体の各所から、無数の細かな出血がある。せんとうによるものとは別だ。


「おい……一応お前連れて帰れってらい受けてんだけどな。城で待ってんぞ」


 ダイスののうかぶのは、こんじようの肉親だ。たんりよで、けており、きんちよう感と危機感が無い。だが、弟の異常なへんぼうに対して、こたえたおろかな人間。


「骨ごときに見くびられたモノだ……わがはいがこの程度で死ぬかよ。乗れ」


「ならいいけど。だいじようだろうな、これ」


 おそるおそる、アルが黒手の上へと乗った。だがかれの予想に反し、りよく源が同質なためかじゆうたんのようにむ。


《可能な限りはなれ、ぼうぎよてつされよ……貴方あなたさまならば、それでえることかなうでしょう》


 コキュトーの念話。きよを無にするというりゆうせいを持ってして、なおも届かぬ場所からの声だ。受けたダイスが鼻で笑った。


げいげきなど想像の外か。未熟者め。──行くぞ」


「はーいやだなー……おうやれ」


 そして。


 高空五十キル。異世界の言葉ならばせいそうけんと呼ばれる空域。


 地上。王都きんりん、ベヘナ平原。


 両点から同時に、かれは飛び立つ。


「行って────────────来い! かえらんでもいいがな!!」


「うっせバ────カ! 絶対もどってきて──────うおおおおおおおお加速すげええええぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇえええええええ!」


 地層を軽々えぐこくりゆうおうぜつそうが空をき、一体のよろい付人骨をとうてきする。


「……今度こそ、いつさい、どちらに転べどこんじようの別れだ、コキュトー。来訪、たいだった」


 ただ一り。そのためだけにめられたちようりよくいて、ダイスがだ氷を残す地面へとひざを付いた。




 続けて天へと飛び立った、きよだいな白光、そして小さな黒光。


 それは、たいせいが決した王都がいへき周辺からも、がいへき上からも、王城からも見えていた。


「アル────」


 三人の女性が、異口同音に言葉を発した。何が起きているかなど分かりはないが、黒の光はかれであると、不思議な確信があった。




 音速をはるはるか、はるか──はるか後方へと置き去りにし、すさまじい速度でアルが行く。りよく場で風圧をいて、その速度は落ちることがない。むしろだ加速が続いている。


(あのろう……よろい無かったら絶対バラバラになってんぞこれ。後でぶんなぐる)


 とても声を出せるかんきようではない。そして、しばし。アルの光無きがんこうえる先、一つの点がかんだ。無言で、かれは右しゆこつあいけんかたに構え、わん骨を前に出した。


 たがいに、その存在に気付いている。


(貴様、だけは────)りゆうりんを赤熱させるはくりゆうふんともる。


(『どうけんおくでん────』)スカットゥルンドが、こくびやくの激光を帯びる。


 しようとつまで、数秒。アルが、一層のりよくをまとう。


「『赤光シヤツコー』────────────────!!」


 しようとつする。星の外からすらも、それははっきりと見えた。


 光が大陸中心高空でばくれつする。空間がける。四方の雲がび、王都周辺数十キルのはんで天候が変わった。


「ガアァァァァァァッッッァァアァァッァアアアアアアアアアアアアアアアア!」


「────────────────ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!」


 かいの神聖けんが、もはや算出することすら鹿らしいほどのりよくと加速度からなるかい力を、わずかもらさず伝え続ける。────コキュトーの、げきりんへと。


 そして、くだけた。


 いつしゆんくうげきがあった。直後、く。くろよろいがいこつが、りゆうの体内へともぐみ、そして、けた。


 りよくの光をともなったかれは、りゆうの血を受け、太陽光を浴びて赤くひかかがやく。


 たがいに加速度を失い、重力にとらわれる前のいつしゆんで。両者はたがいをえた。


「────流石さすがは、こくりゆうおうたおした勇者。およばぬか」


「いや、じゅーぶん強かったよお前……じゃーな」


 コキュトーは笑ったようにアルには見えた。


「死が、死をあたえて回るか。クハ、ハ、ハ──そのじゆんに、私も乗ってくれよう……」


 アルが聞き返すひまは無かった。ダイスのりよく、アルのりよくたくわえられたスカットゥルンドのりよく──それらがはくりゆうの体内をあばくるい、みようじようのような光を地上に見せながら、ばくさんした。


 それを見届けながら、アルは地上へと落ちていく。


「…………さてこれ、着地どうしよっかなぁっぁぁあっぁぁぁぁあああああああああ!」


 声は風にくだけていく。

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