四章 骨勇者、神への供物をクエストする(3/4)
「お、よかった、まだあった」
初手はアルが勇者時代、王都に来た際には必ず立ち寄っていたパン屋『
「いらっしゃい……っておお、あんたが最近
無論、店主はアルの正体に気付きようもない。そのことをちょっぴり
「初めまして、そりゃどーも。このお方が
店主がアルの後ろで店内を見聞するヴァルクを見、その美しさに目を見張った。
「こりゃ大層な御貴人だ……あんたが世話になってるって貴族様かい?」
「もうちょっとえらい」
実際はちょっととかそう言うレベルではないが。
「ひゅう、すげえ骨だなあんた。そんじゃこっちも上等なのを……焼きたてだぜ」
店主が差し出したのはバターと砂糖、小麦粉で作った
「これは……何です? 果物は分かりますが、台座はビスケットですか」
ヴァルクが地上に生きていたのは千年ちょっと前のことだ。現在のいわゆるタルト
「サクサクだから
「ふむ……まあ、ビスケットなら知っています。あまり期待は……むぐ……? ……!?」
ナイフとフォークで、口に運ぶ。想定外のしっとりサクサク感がヴァルクを
(これは……このような焼き方を。しかも、このクリームの質。かつての時代とは
一口ごとに
神様、千年ぶりの時代格差を
「アルヴィ……いや、アル、でしたか。ここが人界一の店なのですか?」
「いや、
「いやいやいや! そりゃ自分の
「いえ、美味でした。見事です人間よ。
「あ、はい、そりゃ人間ですが。……お、お気に
「これは
フルーツクリームタルトが入った
「いやまあ満足ならそれでいいんだが。他のとこ行かなくていいのか。心当たりだけでもまだいくらかあるぞ」
「この品に
十数分後。そう疑問を
「……………………おぉ」
小声ではあるが、目が
平民街。
「ま、食ってみろ」
冷たさ、それにより
「────神よ」目を閉じ、感じ入るように
「お前だ、お前」
(そういや、ヴァルクは元ハイエルフの
神は産まれた時からの者と、神に認められ、後天的に成る──
神は何らかの
アルもまた、後者の道行きをマルドゥによって
「むむ……これは……スイーツでありながら芸術にも近い……食感と味、
ぱくぱくとスプーンを口へ
「ふうむ、候補二つ目ですか……」
難しそうにヴァルクが
「まだ味見してくのか?」
骨指でコーヒーカップを
アルの問いに、ヴァルクの
「受けて立ちましょう」
「何の勝負なんだよ」
そんな風に気安く会話して歩く二者を、
「あ……アル……と、あれは、
燃えるような赤髪と、
元々は勇者が好む料理と聞き、こっそり通っていたらハマったのである。
東国ヤマに似た国から来た、と主張する店主のこの店は、王都内にいくつかある東国料理店でも一風変わっているが味は
しかし、貴族が行くにはややはばかられると言うことでミクトラも
「ど、どういうことだ……。むぐむぐ、すまん、店主! 代金はここに!」
急いで料理を平らげ(それですら上品なのは
「あっ、ミクトラさん、お
返事もせず
そしてもう一人、こちらは複数の友人と共にいた。
「あら、あれに見えるはアル先生じゃありませんの?」
「あ、ホントだ~。遠くからでもすぐ分かるから便利だよねアル先生」
「そりゃ骨、だし。でもあれ、
口々に、ペリネーテス、ゲルダ、ダステルの三人。今日は学園の試験後、寄り道中だ。
「………………………………なんですと」
そしてもう一人、大口を開けるハルベルである。仲
(そんなバカな
「どうしましたの、ハルベルさん」
「はっ!!」
ハルベルはペリネーテスの言葉で我に返り、
「ごめんペリネ、みんな。……今日はわたし、ここから別行動するね」
「えっちょっ」「がんばれ~」「
学友の返答も聞かぬ内、ハルベルはアル
アルとヴァルクはふたり並んで、丁々発止とやり合いながら王都の町並みを歩いている。
「う、うぬぬぬ……なんだあの親しげな様子は……」
「近くないあれ。絶対近いよ
それを背後から
「「はっ!」」顔を見合わせる羽目になった。
「「…………」」だが二人は
「……あれ? アルがいない?」
「何してんの君らは」
「ぎゃああああああああ!」「うおわああああああ!」
「色気ゼロの声をどーも」
「あ、あ、あ、あ、アル……」
地面にへたり
「変に
「いやその……」「あのです……じゃない、あのだな……」
「なんです、この者らは。
く、とその手が
「お前はいちいち
「貴様の? ふむ……」ヴァルクの神眼が二人を映す。
(一人は──少し混じっているがマルドゥ様の信徒。もう一人は──むぅ)
とりあえず無害と判断し、ヴァルクは
「あ、アル、その、こちらは一体、どのようなお方だ! この私の知識にはないぞ!」
どうにかこうにか立ち直ったミクトラが、
「あ、ああ。生前の知り合いだよ。ヴァルクって言うんだ。お
「そこそこ……常に不敬な男ですね貴様は……」
ヴァルクはどちらかと言えばマイナーな神だ。それこそ、出身であるエルフの森でくらいしか
「はい! はいはい! 質問! どういうご関係ですか! 仲良し!? 仲良しなの!?」
ずばばば、とハルベルがクソ度胸で挙手する。ヴァルクとアルは顔と
「「仲良しではない(ありません)」」同時
「うう、気は合ってる……」ややへにょりとして手を下ろすハルベル。
「あのね、変な
「
ヴァルクが当然の
「言い方ァ! あと
「
「デートにしか見えないんですけど……」
「あのなあ……あ、そうだ」
食い下がる二人に、アルは
「どうせだ。君らも協力してくれ」
指骨が、ヴァルクが手に持つスイーツを指し示した。人間二人が小首を
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